-NADESICO THE AFTER NOVEL "FOR THE LOVE OF FAMILY"-


エピローグ




 打ち寄せるさざ波の中で、少女は海と戯れていた。

 歳の頃は10歳くらいだろうか、銀色の髪をポニーテールにまとめ、純白のワンピースを身に纏っている。
 遠くからそんな少女を諭すように、同じ色の髪をもつ母親が少女に声をかけた。母親の元に駆け寄る少女。
「ママ、これ見て」
 母親が名前も知らぬ貝を娘は誇らしげに見せた。白と桃色のグラデーションが絶妙な輝きを見せる、まるで宝石のような貝。母親はそんな娘の髪を優しく撫でる。笑顔で母親に抱きつく少女。
「どうした、いいものでも見つけたのかい?」
 父親なのだろう、黒い髪のたくましい青年が少女を軽々と抱き上げる。
「うん、見てパパ」
 自慢げに貝を見せる娘の姿がほほえましい。
「そっか、よかったな」
「うん!」
 目を輝かせる娘を、そっと下ろす父親。

「こういう光景を見ると思い出すわ・・・あの戦いを」
 海と戯れる我が子を遠巻きに見つめながら、母親は言った。
「もう何年になるのかな・・・」
「ねえ?」
 妻の顔を目の前で見て、青年は少し驚く。
「どうしてあの時、戦神はあの3人を救ったと思う?」
暫し黙り、青年は答えた。
「問いかけ・・・かな」
「問いかけ?」
 我が子を愛おしげに見つめ、青年は答えた。
「きっとあいつらは、見てみたかったんだと思うんだ。作られた僕たちが、どのように生きていくのか。確かに言われたとおり諍いも幾度となく起こした。苦しむことも多かった・・・」
「でも、私たちはそれを乗り越えてきた」
 妻の声に頷く青年。今、2人で共に生き、娘を授かった自分たちをあいつらは笑うだろうか?それとも・・・そう青年は思った。
「過去は乗り越える、そうあの時私たちは誓ったはずよ」
 微笑みかける妻の声に、青年は笑った。
「そうだったね・・・」

 いつしか月が登り、宝石をちりばめたビロードのような夜空が広がる。左手に父の右手を、右手に母の左手を握り少女は瞳を輝かせた。
「すっごーい・・・こんなの初めて」
 その光景に見入る少女、そんな少女を優しく見守る両親。
「ねえママ」
「なあに?」
 腰を下ろし、娘と視線を合わせる母親。
「どうして、ここに来ようって思ったの?」
「そうね・・・あなたは、自分が何処から来たと思う?」
 唐突な母親の問いに娘は瞳を白黒させるも、すぐに妥当な答えを導いた。
「ママのお腹の中」
 えっへんと胸をはり、答える少女。
「そうね。じゃあ、ママの最初は誰だったと思う?」
「・・・?」
 娘には理解できていないようだ。まあ、当たり前と言えば当たり前だが。
「最初の・・・ママ?」
 それでも娘は必死に考え、ようやく妥当な答えを導いた。
「そう・・・最初のママ」
「聖書のイヴのこと?」
 ひらめいたように娘は言う。
「そうね・・・そうとも言えるわ」
「・・・、もしパパとママがイヴにあったと言ったら、お前は信じるかい?」
 娘の頭に手を置き、父親が言った。
「えー、ちょっと信じられないよ」
 ぶーと頬を膨らませる少女。
「信じろとは言わないけど、その時の場所がここなんだ」
 あの時と変わらず輝き続ける月を見つめ、父親は言った。

 イヴが生まれて幾星霜。それでも変わらないのはあの月の輝きだけなのか・・・そう2人は思った。宇宙へ飛び出しても、違う星の子と出会っても、時を越える術を見いだしてもヒトは本質的には何一つ変わっていないのではないかと思う。

「パパ?」
 不思議そうに問う娘の言葉に、父親は我に返った。
「あ・・・もう帰ろうか、風邪ひいたら大変だし」
「うん」
 頷き、父の手を握る娘。
「そうね」
 母がその反対の手を握る。

 変わらぬ輝きを放つ月を背にして、親子は歩き出した。
 微笑み会う3人を、そっと月が照らしていた。
 いつまでも・・・






NADESICO THE AFTER NOVEL "FOR THE LOVE OF FAMILY"

THE END


SPECIAL THANKS TO

BANCHO
FUSUMA2
DEEP S.(T)
XEBEC
RYUICHI OOTUKA

AND......

YOU

PRESENTED BY

"OROCHI"










参考資料
 本作品を書くにあたり、次の図書を参考とさせていただきました。ご協力感謝します。(順不同)

 角川書店/ニュータイプフイルムブック 機動戦艦ナデシコ1〜3
 角川書店/ニュータイプフイルムブック 劇場版機動戦艦ナデシコ上、下
 角川書店/ニュータイプ100%コレクション 機動戦艦ナデシコPERFECTS
 大河内一楼、大月俊倫/機動戦艦ナデシコ ルリの航海日誌上、下/角川書店 大河内一楼、佐藤竜雄/機動戦艦ナデシコ ルリ、AからBへの物語/角川書店
 角川書店/機動戦艦ナデシコ The blank of 3 yearsオフィシャルガイド
 学研/アニメMONOカタログ
 日本聖書教会/旧約聖書、新約聖書
 DigiCube/Xenogears PERFECT WORKS
 DigiCube/ゼノギアス・メモリアル・アルバム THOUSANDS OF DAGGERS
 講談社/マイドクター家庭医学大事典
 瀬名秀明/パラサイト・イヴ/角川書店
 瀬名秀明/ブレイン・ヴァレー上、下/角川書店
 森村誠一/悪魔の飽食/角川書店
 森村誠一/続・悪魔の飽食/角川書店
(出版社名ロスト)/物理学大事典
 朝日新聞社/知恵蔵 1998年度版
 自由国民社/現代用語の基礎知識 1990年度版
 ヨースタイン・ゴルデル/ソフィーの世界〜哲学者からの不思議な手紙/NHK出版
 大槻義彦/基礎教養物理学/学術図書
 
 インターネットより、次の作品も参考にさせていただきました。

 山本マキ/ユーチャリス〜清らかなる心/テンカワアキトホームページ
河田秀一郎/The last princess/河田君家発時之部屋行
大塚りゅういち/劇場版の続き YURIKA forever (仮)/それいけ美人艦長御統ユリカ様
九条公人/劇場版機動戦艦ナデシコシリーズ/九条公人の小説工房
髑髏の騎士/人形の夢と目覚め〜Dolly's dream/想幻の館
sibutani/「仮面」の男達/河田君家発時之部屋行






あとがき

 お・・・おわったー・・・
 正直な感想を言いますと、こんな所です。当初は99年3月完結予定だったはずが、伸びに伸びてこんな結果に落ち着いてしまいました。
 締め切り通りに仕上げる作家の皆様の偉大さを改めて痛感しました・・・いや、冗談ではなく・・・
ともかく劇場版のアフター小説と言うことで、なんとか完結できてほっとしています。実はこの作品、私の処女作ということでかなり感慨深いです。これから先何を書くかは未定ですが、いきなり越えにくい壁になってしまったような・・・そんな気がします。

 最後ですので、製作にまつわる裏話でも紹介しようと思います。

 その1「コンセプト」
 正直な話、劇場版のあの終わりかたに納得いかなかった方は私を含めてかなりいたと思います。そんなわけで、自分も書いてみようという気持ちになったのが去年98年の夏でした。そう思って書いたのが第1部でした。ともかく目的は一つ「ルリとアキトの和解のシーンを最高に描く」ということでした。どう思われたかは皆様にお任せしますが、第4話のあのシーンは自分でもかなり気に入っていますが、いかがなものでしょう?

 その2「七宝衆の落とし穴」
 ルリもハリも七宝の一つ・・・ならこれを使って話が作れそうだな。と13話を書いているときに思い立ち、最後まで結構絡んできました。とりあえずルリとハーリー、ラピスは名前変えたということにして・・・メノウとサンゴは敵に回すか・・・と思っていたのもつかの間、ふと気がついたこと・・・
「後の2人どうしよう・・・(←バカ)」
 そうなんです。七宝というくらいだから、7人いるんですねえ。今更唐突に現れたキャラが6人目、7人目といってもインパクトが薄い・・・。後のこと考えずに設定を作る困った癖があるのですが、これが一番大きかった・・・
 というわけで、ゲームの登場人物を使うという策に出ました。インパクトもそこそこあるし、例のシナリオなら第3部の世界観に結構合う・・・発売から半年も経っているんだからネタばらしてもいいだろう・・・ということです。止めた方がいいんじゃないかと友人Fにも言われたのですが、他に手もなかったし仕方がなかったということでした。受け入れられるか不安だったのですが、あちこちでお褒めの言葉を頂きほっとしております。あの2人のその後に至っては、ご想像にお任せします。どなたか書いてくれたら嬉しいんですが。

その3「迷(?)カップリング」
 とりあえずこの話はアキトとユリカ、ジュンとユキナ以外のカップル・・・ルリとハーリー、ラピスとショウ、リョーコとサブロウタ、プロスペクターとヤヲトメに言えることです。もっとも本編でラピスとショウ、プロスペクターとヤヲトメ以外のカップルはそれとなく関係が示唆されていたので、まあ問題ないと思ったのですが、現実は違うんですね、これが。
 意外にもルリ、ラピス、リョーコに対しては、アキト以外の相手と絶対絡ませないという信念を持った人がかなり多かったわけです。第1部が気に入ったという人は、大概ルリとアキトをくっつけろと仰いましたし・・・。そういう方々を別に否定するつもりはないんですが、受け入れられるかなあと結構不安に陥っていたのは事実でしょう。特にハーリーなんてギャグ役がほとんどでしたし。彼をまともに書いた人はエージさんと大塚さんくらいだったような気がします・・・もっとピックアップされてもいい気がするんですが・・・彼は。
 ルリとハーリーについて
 この2人は、結構最初から頑張って書いていました。弱い少年が大切な人を護れるようになるため少しずつ成長していく・・・そんなところを書きたかったというのが本音です。正直なところを言えば、ルリ×アキト派の方々に、この2人でも物語は作れるんだということを見せてやる・・・といった意気込みもありました。年齢的にも無理がない2人ですし。だから最後に戦神を倒す役目は、彼だとずっと決めていました。この話の主役は本当はルリではなく彼なのかもしれません。
 今回のラストで2人は一緒にバカロレアで世界各地を回ることになりましたが、機会があったらその時の物語も書いてみたいですね。
リョーコとサブロウタについて
 意外にもこの2人の話は少なく、今まで一本しか見たことありませんでした。そんなら一発書いてやろうか、と思ったのが16、17話です。結構さばさばしているけど、心の奥では結びついている・・・そんなところでしょう。
 ラピスとショウについて
 というわけで、ラピスの相手がオリジナルキャラになるという、ナデシコファンフィクション界唯一(と思われる)話です。しかも相手はアキトよりも年上で、ラピスと同等以上の重いものを背負っている・・・常識で考えたら絶対にあり得ない2人です。しかし自分でも気がつかないうちにいつの間にか・・・小説書いてある程度話が進むと、キャラクターが勝手に動き出して話を作るということがあります。この2人はその産物でしょう。しかし、この2人にも何かしらテーマを持たせればまた話になるな・・・ということで書いたのが12話、13話、24話、25話後編です。ラストでラピスは医者になる決意をしました。人の痛みを誰よりも知る彼女は、結構いい医者になる気がします。どなたか白衣のラピス、描いてくれないでしょうか?
 プロスペクターとヤヲトメについて
実をいうと、この2人の出会いにまつわるエピソードも用意していたのですが、残念なことに構成上の都合からカットせざるを得なかったという状況です。そのため、26話の彼等の話が結構唐突に思えるようになってしまいました。反省点多いです。

その4「ナデシコノベル史上最強(?)の敵」
 宇宙の戦神・・・この正体を決めるにはかなり時間がかかりました。とにかく第3部のテーマにも絡ませねばならないため、目的も同時に考えるというかなり大がかりな作業でした。私の友人Tは、某アーマード・コアの黒幕だ、と言っていましたが・・・
 もう一つの目的は、地球VS木星の図式を打破したいということもありました。どの小説を読んでも大概黒幕は木星出身者だったので、サブロウタやユキナのことを考えると、あまり地球と木連を戦わせて書くのが好きではないということが一つ。そして全員劇場版の時のしがらみからは解放されたのだから、新しい敵とやり合わせてみようということもあります。一風変わった哲学を持つ老人、いかがなものでしょうか?

その5「復活」
アキトの復活は、最初からテーマになっていました。私は工学部の人間であるため、どうしても障害があったらそれから脱却したくなるという考えの持ち主なわけです。そんなわけで、彼の受けた実験を自分なりに予測したり他の人の作品を参考にしたりして、色々考えてみました。
 しかし、問題はヤヲトメ達のことです。この3人はテーマを考えるのなら死んでそのままにするのが最も良い選択である気がします。ついでにいうと、当初の予定ではショウもガイセと差し違える予定でした。しかし、劇中でハーリー君が語ってくれたように、このままでは彼等は何のために生まれてきたんだ・・・そういう考えから、彼女たちには生き延びてもらいました。
 正しいのか誤りなのか、判断はみなさんに任せます。

  その6「設定」
 とりあえず一言。基本的な設定は現代物理学とナデシコの基本設定に基づいたつもりですが(あくまでもつもり)、ハイ・ディメンションの話だけは完全に私の想像です。あまり本気にしないでください。
 科学については九条さんと河田さんが非常に優れているので、ちょっとあやかりたいなあ・・・と思います。
 あと余談ですが、エステバリス・デウス(エデウス)は当初エステバリスCEUという名前でした。しかし河田さんの作品でエステバリスFMNという機体が出現したため、急遽路線変更。結果こういう名前になりました。

最後になりましたが、いままで私のつたない小説につき合ってくださったみなさん。ありがとうございました。頂いた感想は、今でも私の糧であり宝です。

また、どこかでお会いしましょう・・・


1999年7月
OROCHI


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