-NADESICO THE AFTER NOVEL "FOR THE LOVE OF FAMILY"-


プロローグ




 静寂と闇が支配する無機質なリノリウムの壁に覆われた円筒状の空間。
 その空間の中心に巨大な機械の柱が建っていた。
 幾つものパイプがさながら蔓のようにからみつき、伸びたパイプは縦横無尽に部屋中を覆っていた。
 そしてそのパイプの全ては、柱の付け根にある丁度人が一人立ったまま入れるくらいの透明なカプセルから伸びていた。
 カプセルの周りでは何人もの白衣の科学者達が走り回り、その機械の調整に追われている。

 その中に、おおよそこの場の雰囲気とは遥かにそぐわない一人の少女がただ黙ってその作業を見つめていた。
 歳の頃は18歳くらい。
 緑色の髪を三つ編みにしている。
 おそらくはヨーロッパ系の整った顔立ちの少女である。
 薄布を体に巻き付け、アンバーの瞳を細め科学者達を見つめる。自分のこれからの運命を全て悟ったかのような歳にそぐわないほどの落ち着いた表情。
 無表情という名の仮面は、彼女の心中に宿るであろう絶望、不安、憎悪全てを覆い隠していた。
「己の運命に逆らう事なかれ」
 彼女の背後に一人の老人が立ち、無機質な言葉を少女に投げかける。
「左様。汝の名は全てを物語っておる」
 別の老人が現れ、さも当然のような冷酷な口調で言葉を発した。
「恐れる事なかれ、汝の命は我らが糧となるのみ」
薄笑いを浮かべてまた別の老人が偽りという名のねぎらいの言葉を投げかけた。
「・・・・・・クス」
 少女はそんな老人達をあざ笑うかのように口元を歪ませた。
「なにがおかしい?」
「滑稽です・・・あなた達は本気で神になるつもりなのですか?」
 少女が瞳を閉じる。
「神ではない。戦の管理者だ」
「人は戦と共に歴史を紡ぐ」
「絶望と混沌の中でのみ進化がある」
 口々に答える老人達。
「そして・・・その先に得られるものは何なのですか?『戦神』、木星に争いの種をまき、いずれ何をさせようというのです?」
「八稚女(ヤヲトメ)よ・・・それは汝の知るところではない」
 老人がカプセルを指さした。それ以上の会話は彼女・・・ヤヲトメには許されない所業。
「・・・争いのみで人は生きるのではありません。私が残した因子は、いずれあなた達を討つでしょう」

 ヤヲトメが体に巻かれた薄布を自ら取り去る。
 年頃の少女の丸みを帯びた白い肢体が包み隠さず晒される。
「戯れ言を・・・」
 老人の言葉を無視し、ヤヲトメが自らカプセルの中にその身を横たえる。
 老人が右手を挙げた。それを合図にカプセルの中のコードが彼女の背中を刺し貫く。
「うっ・・・!」
 悲鳴をあげるまもなく、彼女の意志が消えた。
 カプセルが閉じられ、緑色の半透明の液体がカプセルの中を満たしてゆく。
 パイプから幾つもの輝紋が現れ、機械が正常に稼働していることを示した。

「『因子』はいかがした?」
 老人が科学者に問う。
「ここに」
 科学者が紫の液体が満たされた7つのカプセルをケースに詰めて差し出す。
「いかにする?」
「二つは木星に・・・一つはネルガルに・・・一つはスウェーデンに・・・一つは日本に・・・最後の二つは我らの代行者に」
「この因子を解き明かすとき・・・」
『我らの願いは叶う』
 老人達の声が重なり合う。
 全てを見下すような笑いが部屋に響く。

 この時より始まったのだ・・・
『七宝』の称号を持つ彼らの苦しみが・・・
 
 それより遥かなる時を経て生まれた『七宝』の称号を持つ者たち。
−ホシノ・ルリ−
−マキビ・ハリ−
−ラピス・ラズリ−

 そして・・・
 彼らの『未来』を賭けた戦いが始まった。






  訂正:第13話(誤)七宝集→(正)七宝衆

     

PREVIEW NEXT EPISODE

こんにちは、エリナ・キンジョウ・ウォンよ。
 全ての争いを統べる者。
 火星の反乱。
 アキト君達がオロチへと去ってから、全ては動き出したわ。
 謎の黒いロボット軍団。
 ナデシコの敗北。
 金色の瞳を持つ2人の少女。
 ヤマサキの台頭。
 そして、動き出す『オロチの意志』
 ヤヲトメという名の肉体を持たない少女。
 あの戦いも全ては・・・?
 次回、NADESICO THE AFTER NOVEL "FOR THE LOVE OF FAMILY"
第19話 冥き『黎明』
ファイナルシリーズ開幕、よろしくね。
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