機動戦艦ナデシコif「誰よりも早くあなたに出会っていたら・・・」

第二十話:いつか涙した「荒野」

 
              ***SCENE・2***

 

私たちは、戦争を終わらせたかっただけなのに。

同じ人間同士、争いたくなかっただけなのに。

ささやかな願いは、地球では受け入れられなかった。

だからいっそ地球に見切りを付けて、木星くんだりまで大逃走。

願いを込めた和平会談で、争いは終わるはずだった。けど、・・・

 

『ど、どうすりゃいいんですか?!はんちょー!!』

『ど、どうすりゃいいっていわれても・・・!』

周りは敵に囲まれて、艦内では仕掛けられた爆弾が爆発寸前。内憂外患ってやつですね。

私たちが甘すぎたのか、敵さんが辛すぎるのか・・・

『て、天河くん!俺をその爆弾のところへ!』

白鳥さん?・・・・え・・・ど、どうしたんですか、それ?!ち、血塗れです!

イネスさんや艦長の姿も見えますけど、いったい和平会談で何が!?

『白鳥さん!動いちゃだめだ!』

『も、木連の特殊部隊の仕掛けた爆弾、私ならば解体できるかもしれない!頼む!』

そうでした、白鳥さんは木星出身。この人ならば仕掛けられた爆弾をどうにか出来るかもしれません。

でも、間に合うんでしょうか?あと三分。いえ、二分と・・・いえ、それ以前に、白鳥さんの命が・・・

「ど、どうかしたの、ルリルリ?!なんだか艦内が騒がしいみたいだけど?!」

回避運動でてんてこ舞いのミナトさん、艦内の異変に気が付いたみたいです。

けど、教えていいものでしょうか?

和平会談に赴いたはずの白鳥さん達がいつの間にか舞い戻っていて、おまけに大怪我してて血塗れ。

その上艦内に爆弾が仕掛けられているだなんて・・・

「・・・・ちょっと、ややこしいことになってます。もう少し落ち着いたらお話ししますから。」

「そう?わっととと、あっぶなー・・わかったわ、また後でね。」

「んーもう!どうして攻撃なんかすんのよー!やめなさいよー!!こらーっ!」

「無駄よ、ユキナちゃん。とにかく、おとなしくしててちょうだい。」

「はーい。ちょこん、と。」

・・・たぶん、これでいいはず・・です。今ミナトさんに白鳥さんの事を教えたら、

操舵放り出して行っちゃうでしょうから。でも、これが本当に正しい選択なのか・・・

もし、怪我しているのが明人さんで、私がミナトさんの立場だったなら、きっと・・・

恨むでしょうね・・・

 

「お、おい、大丈夫か?!しっかりしろお!ほれ、こいつが爆弾だ!どうすりゃ解体できるんだよ?!」

ウリバタケさん達、どうやら白鳥さんを爆弾のところまで、なんとか連れてきたみたいです。あと・・二分ちょうど・・

「・・・すいません、もう、解体する時間が、ありません・・・」

「な、なんだってえええ!?」

そんな・・!そんなことって・・・じゃあ、ナデシコは・・・!

「・・・だが、方法は、あります・・・こいつを処理する方法が・・・」

え?何、言ってるんでしょうか?『解体は出来ない、けど処理方法はある』?

まるでなぞなぞです。どうする気なんでしょうか?

「天河くん、あれを・・・」

「アレ?アレってなんすか?!」

「さっきボソン・ジャンプするときに使った、C・C・・・まだ、もう一個、残っているはずだろ・・・アレを・・・」

「こ、こいつですか?!」

明人さんがポケットから取り出したのは、あれです、あの青い石・・『C・C』とかいうやつです。

明人さんが、例の自爆寸前のゲキガン・タイプを月まで跳ばした時に使った、あの石です。でも、そんな物を何に・・

ま、まさか?!

「貸してくれ・・・それを使って、爆弾を艦外に、ジャンプ、させる・・・」

「白鳥さん?!そんなの、無理よ!わかっているはずよ!無機物は単独でのボソン・ジャンプはできない!」

「わかって、いますよ、イネスさん・・・だが、そのC・Cが有れば、それを使えば、単独のボソンジャンプが可能だ・・・

さっき、天河くんがやったように・・」

「な?!ま、まさか、あなた?!」

「そう・・・私が、爆弾を抱えてジャンプする。」

空気が、凍り付きました。白鳥さんは、自分を犠牲にして爆弾を外に放り出す気なんです。

自分もろとも・・・

「ば!」

「馬鹿とは、言わせませんよ。もう時間がない。このままじゃあナデシコは、エンジンをやられて沈むしかない。」

「お!」

「『俺がやる!』と言うつもりだろうが、天河くん、それは、だめだ。C・Cは後残り一個。いわば片道切符のみ。生きては帰れぬ。

だが、君は死んではだめだ。君にはまだ、守るものが、守りたい人が、いるはずだ。君は、死すべき存在では、ない。

死ぬのは、棺桶に片足を踏み込んだ、この俺の役目だ。」

「瑠璃ちゃん!?どうしたの?!顔が真っ青よ!?」

「ルリルリ?!どうしたの?!」

メグミさんとミナトさん、それにユキナさんが、ただならぬ雰囲気に気が付きました。もう、黙っているわけにはいきません。

「緊急事態です!白鳥さんがナデシコ艦内にいます!」

「え?!九十九さんが?!ど、どうして?!いつの間に?!」

「お兄ちゃんが?!」

「それだけじゃありません!艦内に爆弾が仕掛けられていて、白鳥さんがそれを処理するって・・」

「ば、ばくだんー!!??」

「九十九さん?!そこにいるの?!」

「ああ、ハル・・いや、ミナトさん・・・それに、ユキナ?!な、なんでお前まで?!」」

「九十九さん?!ど、どうしたの、その怪我は?!待ってて!!今、そこに行くから!!」

「お兄ちゃん?!」

「待ってくれ、ミナトさん、ユキナ。来ては、いけない。」

「え?!ど、どうして?!怪我、してるんでしょう?!」

「あなたには、やらなければならないことが、ある。ナデシコの、繰艦が。今部署を離れては、いけない・・・ごほ、ごほっ・・・」

「九十九さん!!」

「いいか、来ては、いけない。あなたの腕に、ナデシコの運命がかかっているんだ。あなたがいなければ、ナデシコは沈んでしまう。

あなたには、やるべき仕事が、あるんだ。」

「九十九さん・・・」

「お兄ちゃん・・・」

「そして、私にもやるべき仕事が、ある。この爆弾を、ナデシコから放り出すという仕事が・・・

さあ、明人くん・・・力を、貸して、くれ・・・君の、力を・・」

「力?俺の、力?」

「そう、だ。残念ながら、私一人ではジャンプは、出来ない。以前ネルガルに保護されたときに、さんざん試したからな。

だが、君の力を借りれば、出来る。君の力で、私を、私のイメージする場所に送って、くれ。」

「明人くんに、ナビゲートさせるのね・・・」

「そう、です。」

「そんな・・!そんなこと、できないっすよ!!俺には、無理です!そんな・・!」

「天河くん、君にならば、出来る。信じるんだ、自分の力を。さっきも、出来ただろう?今度は、私だけを跳ばせばいいんだ。

君は少しだけ力を貸してくれれば、いいんだ。」

そんな・・それって、間接的にだけど、人殺しです。明人さんに、そんなこと・・・

できっこありません。でも、そうしないと、ナデシコが・・・

「・・・明人くん、やりなさい。もう、時間がないわ。」

「そんな!俺に、白鳥さんを殺せっていうんですか?!俺は、俺は、人殺しなんか!」

ぐいっ!

あの怪我で、どこにそんな力が残っていたんでしょうか?突然、白鳥さんが明人さんの胸ぐらをつかみました。そのまま引き寄せます。

「天河明人!このままじゃあ、みんな死ぬぞ!君の愛する人が!君の愛する仲間達が!

それでいいのか?!」

「死ぬ?みんな・・・みんな、死ぬ?瑠璃ちゃんも・・・?」

「そうだ!そして、俺の愛する人も、みんな、だ!それでいいのか?!俺は、いやだ!死なせない!

俺の惚れた人を、あの人を、そして、大切な妹を!死なせはしない!頼む、俺に力を、力を貸してくれ!」

「白鳥、さん・・・」

「さあ、C・Cを・・・」

明人さんの手から白鳥さんの手へ、青い石が渡されました。それは、二度と帰ることの出来ない、死への片道切符・・・

「天河くん・・・最後に、頼みが、ある。これを、ミナトさんに渡して、くれないか?」

そういって、白鳥さんが懐から取り出したのは、小さな黒い小箱。その中にあったのは、

小さな・・・指輪・・・

「白鳥さん、これ・・」

「地球でな・・才蔵さんのお店で働いた時、『給金だ』って渡されたお金でね・・・一ヶ月分もない、安物の指輪だけど・・これを・・ミナトさんに・・・」

「白鳥さん・・・」

「それと・・これを、君に・・託す。受け取って、くれ・・」

そういって、白鳥さんが再度懐から取り出したのは、銀色の小さな・・・プレート?

何、あれ・・・

「白鳥さん・・・これは?」

「・・あの時、次元跳躍門に追い落とされた私は・・・目的地をイメージしないままボソン・ジャンプをし・・・そして、たどり着いた。

遠い先の未来か・・それとも、遙か過去だったのかもしれない・・・赤い大地の火星に・・・そして、出会った・・彼らに・・」

彼ら?誰に出会ったと言うんでしょうか?

「白鳥さん?いったい・・・」

「私にも、詳しいことは、わからない。だが、それがそれが、重大な“鍵”だということ。そして、地球にも、木星にも渡せないと言うこと。

それだけは、わかる・・・だから・・君に・・・ああ、時間が、ない。もう、行かなくては・・・

爆弾のカウントが、残り二十秒を、切りました。もう、時間がありません。

青い石が輝き始め、白鳥さんの体に、ナノマシンの光の奔流が現れました。同調するように、明人さんの体にも・・・

「お兄ちゃん!!」

【15・・・】

「九十九さん!」

【14・・・】

「白鳥さん・・・」

【13・・・】

「さあ、行くぞ。あいつらに、一泡吹かせてやる。・・・明人くん、信じるんだ、自分の力を。自分の中の正義を。俺の魂を・・無駄に、するな。」

「!」

【7・・・】

それが、あの人−白鳥九十九さん−の、最後の言葉でした。

一瞬の閃光と共に、彼の姿はかき消すように、消えました・・・

それと同時に、敵の旗艦のエンジン部が爆発・炎上するのが観測されました。

攻撃が、弱まりました。これなら、逃げられるかもしれません。

でも・・・これって、やっぱり・・・白鳥さんが・・・

 

ズウウウン!

「な?!何事だ?!」

「こ、こちら艦橋!相転移炉部分に爆発!機関が停止しました!!」

「なんだと!?ば、馬鹿な?!」

「重力推進停止!時空歪曲場消失!重力波砲使用不可能!このままでは・・!」

「お、おのれええっ!きゃつらか?!きゃつらの仕業なのか?!」

「・・・おそらくは。しかし、どうやって・・・」

「おのれ!おのれ!正義が、負けるわけにはいかん、いかんのだ!」

『閣下!緊急通信!戦艦【ゆめみずき】!アララギ少佐からです!』

「アララギだと?!あやつ、まだこの宙域をうろちょろして、い、いや、ちょうどよい!繋げ!」

『閣下!これは、どういう事ですか?!なぜ、和平大使の乗った地球の船を、攻撃しているのですか?!

それに、先ほどのそちらの艦の爆発は?!』

「答える必要は、無い!それより命令を伝える!地球の相転移炉搭載艦を、撃沈せよ!」『な?!なぜ、なぜです?!

あの艦は、和平のために・・・!』

「和平は、偽りだった!あやつらは、この儂を暗殺しようとしたのだ!白鳥も、敵のスパイだった!」

『ば、馬鹿な?!白鳥少佐殿が?!それに、閣下を暗殺ですと?!な、何かのお間違いでは?!彼らは、決して、』

「儂の言うことが、信じられぬと言うのか!きさまは黙って命令に従っておれば良いのだ!もう一度言う!敵戦艦を、撃沈せよ!」

『・・・閣下、申し訳有りませんが、それは出来ません。閣下の乗られておられる戦艦、機関部に重大な損傷が見受けられます。

このまま放っておく訳にはいきませぬ。艦の応急処置と負傷者の救助を行います。追撃は、あきらめるがよろしいかと。』

「な?!き、きさま!命令違反をする気か?!軍法会議ものだぞ!!」

『なんと言われましょうと、このまま放置するわけにはいきません。負傷者の救助と閣下の身柄の保護。これが、最重要です。それでは。』

「アララギ!きさま・・」ぷつっ

 

「・・・よかったんですか艦長、これで?」

「・・・仕方有るまい。“ゆみづき”の損傷の度合いは、放置できるものではない。負傷者の救助もある。責任は、私が取る。

貴様らは関係ないから、安心しろ。」

「そりゃないですよ、艦長。毒を食らわば皿まで。我ら『星野瑠璃・ファン倶楽部』一同、地獄のそこまでお付き合いしますぜ!」

「はっはっは・・・すまん、諸君・・・」(逃げ延びて、くださいよ・・・)

 

「くううっ、どいつもこいつも・・!穏健派の連中は、腰抜けばかりだ!ええい、かまわん!護衛の無人艦隊を全て追撃に回せ!

北辰!情報は!?“遺跡”の情報は手に入ったのか?!」

「・・・ご安心を。ただ今部下が帰還。“遺跡”所在地情報の入手、完遂したとの報が。」

「おおっ、そうか!!勝てる、勝てるぞ!ふははは!正義は、やはり我らにあった!直ちに火星の全駐留部隊に命令!遺跡の確保を!」

『・・・少し、お待ちを。入手した情報を分析したところ、遺跡は幾層もの時空歪曲場によって防護されていると事です。

中枢にたどり着くには、生体跳躍が可能な優人部隊の派遣が必要と思われますが・・・』

「何?!むう・・現在火星に派遣可能な優人部隊は?」

「我らは、艦がこの有様では、手近の次元跳躍門に向かうことも困難。アララギ達では、役者不足。

そうなると、やはり本国に残っている秋山と高杉の部隊。それと・・」

「月臣、奴か・・・奴は月面基地への無断侵攻の責を取り、謹慎中だ。だが・・・やむをえん、か・・・」

「信用・・・できますかな?」

「信用するしないでは、ない。その能力があるかないか、だ。直ちに本国の秋山・高杉部隊に連絡!

謹慎中の月臣と共に火星の“遺跡”中枢確保の任に付くように伝えよ!我らが木連の興亡、この一戦にあり!奮闘せよと檄を飛ばせ!」

 

「敵旗艦沈黙しました。今なら包囲網突破できます。・・・艦長・・・」

「・・・り、りょうか、い・・・ナ、ナデシコ、最大、戦速。戦闘宙域より、離脱、します・・・ミナトさん・・・お願い・・・」

「は、はい・・・ナデシコ、離脱しま、す・・・」

ぽろぽろ、ぽろぽろ、みんなの目から涙がこぼれます。

歯を食いしばって、耐えています。

悲しみ、怒り、落胆と、そして・・・

私は、泣いていません。やっぱり、泣けません。悲しみが胸に満ちていても、泣くことができないみたいです・・・

私は、やっぱり他の人とは違うみたい、です。

白鳥さんが死んで、みんなが泣いているのに、私は一人冷静に戦局を見つめて、離脱を促している。まるで戦争のための道具、です・・・

泣くべき時に泣けない。悲しいのに、涙が出ない。いえ、本当に悲しいと、思ってるんでしょうか?私は・・・

私の心は、ガラスみたいなんじゃないでしょうか?悲しみも、喜びも、人が誰しも持っている全ての“感情”が、

表面を滑り落ちているんじゃないでしょうか?

私は・・・私は・・・

《瑠璃さん、敵無人戦艦群が追撃してきました。このままでは追いつかれます。》

『・・・エンジン出力、これ以上は上がらないの?オモイカネ?』

《先の戦闘でのダメージが予想以上に深刻です。これ以上は・・・》

まずいです。このままでは、追いつかれます。白鳥さんが命を懸けてまで稼いでくれた脱出のチャンスも、このままでは無駄になってしまいます。

このままじゃ、みんな、死んでしまう。私も、艦長も、ミナトさんも、ユキナさんも、そして・・・明人さんも。

せめて、せめて・・・あの人は・・・あの人だけは・・・

『避けて。』

・・・え?誰?今の声?

『正面、グラビティ・ブラストの重力波が向かってます。後六秒で到達。避けて。』

この声・・・・直接、脳に伝わってきています。いえ、正確にはオモイカネを通じて、

私のナノマシンの補助脳にアクセスしているみたいです。これって?

『早く!後三秒!』

「ミナトさん!正面から重力波が来ます!避けてください!」

「え?!わ、わかったわ!面舵一杯!」

急激に進路を変えたナデシコ。その元いた場所を、真っ正面から来た重力波が通過しました。

そのまま、ナデシコを追撃してきた無人戦艦群を葬り去ります。

「すご・・・」

「前方から二隻、来ます。一隻は、照合確認。ナデシコ二番艦【コスモス】です。もう一隻は・・・データーに有りません。新型と思われます。」

『こいつの名前は、ナデシコ級五番艦【カキツバタ】だよ。やれやれ、なんとか間に合ったみたいだな。無事か?ナデシコ。』

「あ。あなたは?!」

「アカツキさん・・・」

モニターに現れたのは、あの人でした。エステバリス補充パイロット、そして、その正体は現ネルガル会長、アカツキ・ナガレ・・・・

『やあれやれ、何をやってるんだか、君たちは。まあいい。援護するからとっとと逃げちゃいなさい。コスモスがお待ちかねだ。』

「ア、アカツキさん・・・助けてくれるんですか?」

「仕方ないでしょーが、この状況じゃ。ほら、とっとと退却。急いで。』

どうやら、助かったみたいです。でも、さっきの声・・・一体、誰?

 

「どうも、ありがとうございました、アカツキさん・・・」

「おやおや、その顔。とても感謝の表情とは思えないなあ、艦長。」

「え、いえ、そんなことは・・・」

「ま、いいさ。その様子じゃ案の定、和平会談は失敗のご様子だったようだねえ。まあこちらとしては好都合だが。」

「なんだと!お前!」

「明人!やめろ!」

アカツキさんの言いぐさに、かっとなった明人さんが殴りかかろうとしました。

リョーコさんが間に入って止めてくれましたけど、あんな言い方、しなくてもいいと思います。

あれじゃあ、和平に命を懸けていた白鳥さんが、かわいそうです。

きっとみんな、明人さんと気持ちは同じはず。そんなみんなの気持ちを知ってか知らずか、アカツキさんは飄々として話を続けてます。

「やれやれ、相変わらずだなあ、君は。でも、これでわかったでしょうが。戦争は個人の感情なんかじゃどうにもならないって事が、さ。

悲しいけど、これって戦争なのよね。」

「そんなことよりアカツキさん、どうやってここに?私たち、尾けられた覚えも無いのに?」

そう、それが不思議です。この広い宇宙空間で、ある程度進路の予測が出来たとしても、

都合よく助けになんて来れるはずありません。一体どういう手品を使ったんでしょうか?

「そこはそれ、君たちが大好きなゲキガンガーと同じ、ご都合主義ってやつさ。・・と、いうのは冗談。実は、彼女のおかげでね。」

そういってアカツキさんが手招きしたのは・・・私と同じくらい、いえ、それよりも小さな、年の頃十歳くらいの女の子、でした。

薄桃色の髪、陶器のような白い肌。そしてその瞳は・・・私と同じ金色の瞳。

この子は・・・?

「アカツキさん、この子は?」

「紹介しよう。この子の名は、ラピス・ラズリ。この【カキツバタ】に搭載されているオモイカネ型コンピューター

『オモイマツカネ』の専属オペレーターだ。」

オモイカネと同型の、コンピューター?『オモイマツカネ』?その専属オペレーターって・・・もしかして、私と同じ遺伝子操作をされているの?

「アカツキさん、まさか、この子は・・瑠璃ちゃんと同じ・・・」

「その通り。遺伝子操作によるIFS強化体質。」

「そんな・・・こ、こんな小さな子供まで戦場に駆り出すなんて・・・」

「し、仕方ないでしょう。ナデシコ級戦艦に搭載されている、オモイカネ型コンピューターの性能を100%引き出せる人間が、

他にいなかったんだから・・・」

ばつが悪そうなエリナさん。さすがに、こんな小さな子供を戦場に引っぱり出したのは気が引けるみたい。

・・・私ぐらいの年齢ならばOKなのかというと、それはそれで問題ですけど。

「まあまあ。そのおかげで、こうして君たちは助かったんだから、文句言わないの。さて、さっきあった質問

『なぜこの座標にいるのがわかったのか?』の答えだが、オモイカネ型コンピューターは、特殊なリンクをしていてね。

どれだけ遠くに離れていようとも、空間を越えた繋がりがあるみたいなんだな、これが。詳しいことは省くけど、

彼女、ラピスがオモイカネとオモイマツカネを通じて、君たちのいるところを察知してくれたんだ。」

空間を越えた繋がり?そんなこと、あるんでしょうか?でも、そうでなければ説明付かないみたいですし。

あ、そうすると、あの時聞こえた“声”は・・・

「あなた、星野瑠璃。」

いつの間にかその子が、私の前に立っていました。私を見つめる、金色の瞳・・・

まるで、鏡に映る自分の瞳をのぞき込んでいるようです。

「・・・そう。私が、ナデシコオペレーター、星野瑠璃です。あなたの名前、確か・・」

「ラピス。ラピス・ラズリ。ネルガルの研究所で生まれた。」

やっぱりそうです。あの時聞こえた声に間違い有りません。

「さて、自己紹介もすんだようだし、それじゃいこうか。」

え?行くって・・・どこに?

「アカツキさん?どこに行くんですか?」

「おいおい、本気で言ってるのかい?君たちがとった行動で、木星側に“遺跡”の情報が漏れてしまったんでしょうが。

こうなったら、木星蜥蜴より早く“遺跡”を手に入れないとならない。君たちにも協力してもらうよ。火星の“遺跡”の確保をね。」

火星。あの赤い星に、ですか。

全てがあの星から、始まりました。そして今、全てが終わろうとしている・・・

・・・続く

 

2000/3/12 かがみ ひろゆき

 

                           ///あとがき///

どうも、こんにちは。かがみ ひろゆきです。今回はすごく重くなってしまいました。テレビ版でもこの回は、現実の厳しさを思い知らされた回でした。

悪ノリともいえるゲキ祭。その後に待ちかまえていた裏切り。アニメの都合のいいところしか見ていなかった自分の甘さに、憤るアキト。

でも、あの回でのナデシコクルー達は、今思うと全員“らしく”なかったのではないかと感じています。戦争中だろうとなんであろうと、

自分らしく好き勝手にドタバタラブコメやっていた連中が、ゲキガンガーの正義に陶酔してしまう。木星が信じているものを信じれば、

彼らもこちらを信じてくれるんじゃないかと思ったのかもしれません。が、彼らも結局、自分たちにとって都合のいい正義を信じていただけだった。

彼らの正義は白と黒しかない。けれども人は、白でも黒でもない。自らを“白”とすれば、必然相手は“黒”にしかならない。

そこに、和平などあるはずがないのです。

この和平は、失敗に終わりました。けれどもその苦い経験は、この後の彼らの行動に大きな影響を与えます。

“白”でも“黒”でもない、“私らしい”決着をつける為に・・・

そして瑠璃にも、自分の“思い”に決着を付けるときが来ます。

“創られた”人間としての自分を恐れ、明人の“妹”という、居心地のいい場所を失うことを恐れ、一歩前に踏み出すことが出来ない自分。

彼女の“思い”は、明人に伝わるのでしょうか?彼女は、勇気を出して“思い”を伝えることが出来るのでしょうか?それは、きっと・・・・・

 

                             ///次回予告///

百合花:うえーん、白鳥さーん・・・って、悲しんでいる場合じゃなあいっ!見ててください!天国の白鳥さん!

     私たちが今度こそ、この戦争を終わらせてみせますっ!“私たちらしく”!ねっ、明人!え?え?どうしちゃったの、明人?!

     ボソン・ジャンプできない?!どうしてえ?!跳ぼうよ、一緒に!私たちの生まれたあの星、火星へ!

     次回機動戦艦ナデシコif・第二十一話「古里」は初茜に染まって・・・

     それでは次回もー、ガンダムファイト、レディー・ゴー!!あ、あれ?

 

前回の予告は「機動戦士ガンダム」でした。正解者は次の方々です!

めるう゛ぃるさん、超兵器A−1号さん、影竜さん、Kitaさん、Hrrachさん、真神(仮)さん改め、神凪さんの六人でした。おめでとう!

なお、前回の予告は濡羽鴉さんにアイデアをいただきました。どうもありがとう!

さて、ここでお知らせです。前回予告いたしました特別編ショートストーリー、できあがりました!が、今回は諸事情により、メールでの配布

にしようかと。一般公開は、一応未定です。容量は5KBほどで、内容は、ルリのブリッジでの独り言です。(もち、アキトがらみ)

お読みになりたい方は、メールに「ルリルリSS読みたーい!!」と、ちからいっぱい書いてお送りください(笑)

まあ、たまにはこういうのもよいかと。宛先は、こちらです。

langa@tokai.or.jp

それでは、また。


かがみさんへの感想メールはこちら
langa@tokai.or.jp


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