機動戦艦ナデシコif「誰よりも早く貴方に出会っていたら・・・」

 
             第十九話:深く 静かに 「交渉」せよ

 

 

【AM10:00 ナデシコ格納庫】

 

その日、ナデシコ後部格納庫に、木連の連絡艇が到着した。降り立ったのは、鋭い眼光をした、長身の男性。

「ようこそ、おいでくださいました。私がこのナデシコの艦長、ミスマル・百合花です。」

「・・・ほお・・・あなたが、この艦の・・・いや、失礼。私が木連優人部隊司令官・・」

「草壁、春樹です。」

 

【AM8:30 木連戦艦“れいづき”艦長室】

 

「閣下、何も御大自らが和平の使者を出迎えに行かずとも・・・」

「・・・北辰よ。きゃつらとて馬鹿ではあるまい。我ら木連がそう易々と地球への恨みを忘れたとは思わぬだろう。

我らの真意を確かめぬ内は、敵艦の警戒も厳しい。貴様であっても侵入は難しいだろう。

だが、木連の実質的指導者であるこの私が出向けば、必ずや警戒を解き、迎え入れるはず。おとりとしては申し分あるまい。」

「ですが、御身は大切な体。もし万が一きゃつらが攻撃を仕掛けてきたら・・・」

「その心配は無用だ。あちらには白鳥がおる。あやつのことだ、そのような卑劣な手段は、どのようなことがあっても許すまい。

それに、今回の会談は、いわば一種の賭。戦況は刻一刻と我らが陣営に不利に働いている。一刻の猶予もならんのだ。

この機会を逃しては、我ら木連の未来は、無い。」

「・・・承知。万事お任せあれ。」

「頼むぞ。なんとしても遺跡の情報を敵艦から・・・」

「奪うのだ!」

 

【AM10:00 再びナデシコ格納庫】

 

「お待ちしておりました、草壁さん。お会いできて光栄です。ご紹介します。今回和平大使として同行いたします、天河明人。」

「ど、どうも。」

「それと、オブザーバーとして選出されました、イネス・フレサンジュ博士。」

「よろしく。」

 

【AM9:30 ナデシコ医務室】

 

「いいの、本当に?あなたじゃなくて、私がオブザーバーとして同行しても。」

「おやおや・・今更何をおっしゃいますやら・・・あなたらしくもない。もしかして、怖じ気づいたとか?」

「まさか。ただ、こういう交渉ごとはあなたの専売特許でしょう?適材適所を考えたら、あなたが出向くのが本筋じゃなくて?」

「いえいえ・・こういった表舞台での活躍は、他の方にお任せいたしますよ。私は裏方が性にあっていますので、はい。」

「・・・ふう。仕方ないわね。まったく、いつまで過去のことを引きずる気かしら?天河さん、もう許してくれてるわよ。きっと。」

「・・・過去のことは、関係ありませんよ。ただ、私みたいな根っからの商売人では、人に信頼されにくいのでね。

昔から看護婦と医者は、戦場では尊敬と崇拝の対象ですからなあ。やはり、あなたにお願いするとしますよ。」

「・・・」

「それにしても、まさか木星側の実質的指導者が、直接この艦に和平大使を迎えに参上するとの連絡があるとは・・・

いやいや、思いませんでしたなあ。」

「そうね。木連中将、草壁春樹・・・あんがい、すんなりと和平が実現するかもね。」

「まったくですな。」

 

【AM9:45 木蓮戦艦“れいづき”搭載 連絡艇内部】

 

「隊長、それで作戦の方は?」

「予定通り、決行する。」

「ははっ!!」

「烈風。お主は疾風、旋風と共に敵相転移搭載型戦艦に侵入。敵艦の電脳連絡網に接触し、“遺跡”所在地に関する情報を収集。」

「了解しました。」

「爆風、お主は残り二名と共に敵戦艦の相転移炉に侵入。時限装置付き爆破装置にての破壊工作だ。」

「応!!」

「よいか、この作戦、失敗は許されぬ。我が木連の命運、この一戦にあると思え。決して気取られるな。目撃者は・・・消せ。」

「もとより、承知のこと。案じてお任せあれ。・・・して、隊長はどちらに?」

「儂か・・・儂は・・・」

「野暮用だ。」

 

【AM10:00 三度び、ナデシコ格納庫】

 

「閣下!お久しぶりです!」

「おお、白鳥!息災だったか?!」

「はっ!まさか、閣下ご自身が我々を迎えに来てくださるとは・・・か、感激です!」

「遠路はるばるお越しくださった和平の使者に対して、当然の対応だ。こたびの和平会談のとりまとめ、ご苦労であったな。」

「か、閣下・・身に余るお言葉・・・」

「うむ。お互いの大切なものを守るためにもこの会談、是非とも成功させようぞ!」

「はっ!」

 

【AM8:45 ナデシコ客室】

 

「いい?入るわよ?」

「ああ、おはようございます、ハルカさん。」

「はい、おはよう。どう、よく眠れた?九十九さん。」

「ええ、不思議なほど、ぐっすりと。この大一番の舞台の前だというのに。緊張感、なさ過ぎですかね?ははは。」

「うふふ。いいんじゃないの?緊張してがちがちよりは。期待してるわよ。つ・く・も・さ・ん。」

「あ、いや、その、ハ、ハルカさ・・・」

「ミ・ナ・ト。」

「あ、その・・・ミ、ミナト・・・さん・・」

「はい、よくできました。うふふ・・」

「はは・・あ、あの、ハルカ・・・じゃない、ミ、ミナトさん!」

「んー?なあに?」

「あ、あの、その・・・お、おほん。こ、この和平会談が無事終わったら、その・・・」

「ん?終わったら?」

「お、終わったら、その、・・・う、受け取って欲しい物が、あ、あるんです!ぜーはーぜーはー・・・」

「へえー。プレゼントなんだー?何かしらー?期待しちゃうわよ。」

「あ、いや、その、そんなに高い物じゃ、無いんですけど、その・・・」

「うふふ、いいの。どんな安物だって。九十九さんがくれる物ならば。」

「は、はい!ありがとうございます!」

「うふふ。さ、そろそろ支度しないと。私はブリッジに行くから。和平会談、がんばってね。」

「はい!がんばります!」

 

【AM10:00 ナデシコメインブリッジ】

 

「ふうーん、あれが木星のお偉い人なんですかー。なんだか、怖そうな人ですね。」

「うふふ、そうね、メグちゃん。」

どうも、星野瑠璃です。艦長不在の、ナデシコブリッジ。今はアオイさんが艦長代理やってます。

んでもって、居残り組の私たちは、モニターで和平大使の出立を見学です。

こうやってモニターを見る限りでは、艦長けっこう凛としていて、様になっています。

いつもこうならいいんだけど・・・

「あ、いたいた、明人さん。がんばれー!」

「あらあら、きょろきょろしちゃって・・・やっぱちょっと落ち着かないみたいねえ。

ねえ、ルリルリ。」

「何がですか。」

「うーん、もう。そんなに怖い顔しなくっても・・・まだこの間のこと怒ってるの?」

「別に、怒ってなんかいません。」

そうです。この間コンサートの邪魔をされたことなんて、別に怒ってなんかいませんとも。

「だから、ごめんって、ね、ね?。あ、そうそう!ルリルリは、明人君のお見送りに行かなくってもいいの?

手の空いている人間はこぞってお見送りに行くみたいなんだけど・・・」

「・・・別に、今生の別れって訳じゃないですし・・・それに、艦長が不在なんですから、私がブリッジを離れるわけには・・・」

「あら、そんなのいいわけにならないわよ。なにせここ大一番の重大なお役目。明人君のプレッシャーも相当な物よ。

ここは一つ、心を込めた励ましの言葉ってのを贈ってあげなきゃ。こういうところでポイントを稼がなきゃ、ね。艦長に負けちゃうわよー。」

「そうそう。」

「ど、どうして艦長がここに出てくるんですか?!第一先ほども言いましたけど、艦長がいないんですから、私がブリッジを離れるわけには・・」

「だいじょーぶ、だいじょーぶ。私やメグちゃん、アオイくんにゴートさんまでいるんだから。

それにああいった木星のお偉いさんが直接来艦するぐらいだもの、攻撃なんかしてこないわよ。」

「で、でも・・・」

「あー、もう!うじうじしてんなよな!ほら、行ってこいよ!後のことは心配すんなって!」

「リョーコさん・・」

「そうそう。まず自分の方から動かなきゃ。ね。」

「メグミさん・・・」

「さ、いってらっしゃい。」

「・・・はい。それじゃ、すいませんが後お願いします。」

「よっしゃー、がんばれー!!」

「ヒカルさん、イズミさん・・・『絶対』後をついてこないでくださいね。」

「・・・ちっ。」

 

【AM10:10 ナデシコ通路】

 

全く、もう・・あの二人は好奇心旺盛というか、野次馬根性丸出しというか・・・

ほんと、ばかばっ・・・と、いけない。急がないと明人さん達、出発しちゃいます。

ささっ

・・・え?今、誰かそこに・・・ヒカルさんか誰かでしょうか?やっぱり後を付けてきたとか?

・・・いえ、そんなはずないですよね。一本道の通路で、私の先回りができるはずありませんし。

手空きの人間は、お見送りにもう行ってるはずですし・・・それにここは、オモイカネの端末しかありませんから、そうそう人間がいるはずは・・・

じゃあ、誰でしょう?

「そこにいるのは・・誰ですか?」

 

「・・・」

 

「そこにいるのは、誰ですか?」

 

・・・続く

 

2000/2/7 かがみ ひろゆき

 

 

                             

                           ///次回予告///

 

                        愛してその人を得ることは 最上である・・・

                        愛してその人を失うことは その次によい

                                                 ===ウィリアム・M・サッカレー===

 

ラピス:誘ワレテ死ンデイク  深イ深イ  宇宙ノ闇

      「きさまああっ!!」

      「未熟者よ。死ね。」

 

動キ出ス  運命ノ歯車

      「ラピス・ラズリ。十歳。オペレーターです。」

      「こ、こんな小さな子供まで・・・」

      「仕方ないわよ・・代わりの人間、他にいなかったんですもの・・・」
 

      「そういうこと。まあ、あれだね。悲しいけど戦争なのよね、これって。」

 

覚醒スル  人タチ

      「明人君、跳ぶのよ!」

      「明人!」

      「うおおおっ!!」

 

サヨヲナラ  ユメノカケラ・・・

      「できない・・できないっすよ、俺!白鳥さん!」

      「天河くん、自分を信じろ。自分の中の、正義を。自分の中の力を。」

      「やめて、明人君!九十九さんを、殺さないで!」

 

アリガトウ  ユメノカケラ・・・

      「泣かないで・・・明人さん・・・」

 

アナタノ  名ハ・・

      「あなた・・名前は?私は・・・・」

 

                    機動戦艦ナデシコif第二十話 いつか涙した「荒野」

                          次の夜まで サヨヲナラ・・・

 

 

                            ///あとがき///

どうも、こんばんは。かがみ ひろゆきです。今回は場所・時間共にボソン・ジャンプしまくりですが、いかがでしたでしょうか?

メールをくださった方にはお知らせ済みですが、いよいよラピスさんのご登場です!(でも、まだ予告だけですけど・・・)

さて、前回の予告クイズの答えは「コレクター・ユイ」でした。

正解者は次の5名です!思兼さん、ぐんさん、真神(仮)さん、超兵器A-1号さん、kitaさん。以上でした。おめでとう!

これが掲載される頃には、部屋のカウンターがまた一万を越えていることでしょう。

(前に一万越えたとき、リセットされてしまいました。だから正確には二万オーバーですね)

これもひとえに皆様方のご声援のたまもの!本当にありがとう!また、このSSを掲載していただいている大塚さんにも厚く御礼申し上げます。

そして、これからもどうかよろしくお願いしますね。それでは、また!

#管理人より:カウンター10000(前回)+11500(2/14更新時点)で修正しておきましたm(_ _)m


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langa@tokai.or.jp


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