機動戦艦ナデシコif「誰よりも早く貴方に出会っていたら・・・」

第十五話:「私たちの戦い」が始まる

 
                 //ACT・2//

白鳥九十九。元木星蜥蜴さん。今現在地球ネルガル重工所属の戦艦「コスモス」の艦長さんやってる人です。

そして、ナデシコに潜り込んだ白鳥ユキナさんの「お兄さん」だそうです。なんだか、とんでもない人たちを抱え込んじゃったみたい。

おまけにせっかく取り戻した月の基地も、またまた現れた新たな木星人「月臣元一郎」に制圧されちゃったって言うし・・・

どうなるんだろう、これから?

 

「どう、月基地の様子は?」

「・・・だめですね。周辺のフィールド発生装置はすでに破壊されています。迎撃システムも沈黙。幸い居住ブロックは無傷みたいですが・・・」

「あったり前でしょう!あんた達野蛮な地球人と違って、あたし達木星の人間は無意味な殺戮はしないわよ!」

私の報告を遮って、ユキナさんが大声を張り上げてます。あれまあ・・・

「ち、ちょっと!誰がこの娘をブリッジに上げたのよ!?部屋に監禁しておきなさいって、あれほど言ったのに!軍紀違反よ!」

案の定、エリナさんが怒っちゃいました。まあ普通敵さんを、艦の中枢であるブリッジに入れちゃうのは問題ありなんでしょうが、

なにせこの人の指揮する船ですから・・

「大丈夫ですよー、エリナさん。見たとこ武器らしい武器も持ってないし、腕っぷしも強くなさそうだしー。

それに、当事者が蚊帳の外だなんて、あんまり感心できないしー。」

「・・・あなた、まだ根に持ってるわね。木星蜥蜴の正体を黙っていたこと。」

「はい。」

にこやかな顔で、あっさりと肯定する艦長。結構、皮肉屋さんですね。

「・・・勝手になさい!そのかわり、何かあったら責任取らせるから!」

今回は艦長の勝ち、みたいです。さてと、状況状況は、と・・・

「報告、続けます。月基地の総合的被害は、まず周囲フィールド発生装置、迎撃システムの完全破壊。

それと、港の港湾施設、船舶用ドックの一番が圧壊。」

「一番が?!あ、あそこには!」

「やられたな・・・さすがに押さえるべき所はきっちり押さえてるな・・・」

一番ドック破壊の報告に、エリナさんとアカツキさんが、かなり苦い顔してます。一体何があったんでしょう?

「あのー・・一番ドック、何が入ってたんですか?」

「・・・ナデシコ型戦艦、四番艦「シャクヤク」・・相転移砲を標準装備した、いわば重砲撃艦とも呼べる船よ。

これから開始予定の、第三次火星争奪戦の切り札となるはずだったんだけど・・」

ナデシコの三番艦、でしたか。確かにそんな物がドックに入ってれば、木星蜥蜴さんのいい標的ですね。

「あああ、もったいない。アレ一隻を作るのにどれだけの費用と時間が掛かったことか・・・

おまけにドックのレンタル代金もまだ未払いですし・・」

なにやらぶつぶつ言いながらプロスさんが、そろばんを取り出して計算始めだしました。

「で、基地を破壊した敵の機動兵器は、今どこに?」

「月基地のほぼ中心部にいます。その数一機。」

「一機だけ?たったそれだけの戦力で、これだけのことをやってのけるなんて・・」

「敵はかなりの腕のようですな。」

「敵影、カメラがとらえました。スクリーンに映します。」

そこは、ちょうど月基地の中心部。たたずんでいるのは、例のゲキガン・タイプ。

ロボットのくせに、器用に腕組みなんかしてます。ちょっとカッコつけ屋さんなのかも。

「どうするの、艦長?あの位置じゃあグラビティ・ブラストで吹き飛ばすわけにもいかないわよ。」

「うーん・・・」

あれ?艦内警報?これは・・・エステバリス?

誰か、勝手に発進しようとしています。誰?・・・まさか?!

「艦長、エステバリス一機、無許可で発進しようとしています。これは、もしかして・・」

「え?・・・メグちゃん、そのエステと通信回線開いて!」

「通信回線、開きます。」

ウインドウに現れたパイロット・・やっぱり、明人さんです。

「明人さん?!」

「明人?!」

「天河、発信許可はまだ降りていないぞ!なぜ発進した!」

「ゴートさん、俺、許せないんすっ!!アイツらがっ!だから、俺に、俺にやらせてくださいっ!」

「勝手なことを!戻れ!」

「いやです!」

「明人!待って!相手は人間なのよ!」

「そんなこと、関係ない!アイツらは、父さんと母さんの仇だ!地球の敵なんだ!俺達の敵なんだよっ!

同じ人間だったなんて・・同じ人間だったなんて・・」

「明人っ!」

ここで会ったが百年目。熱くなった明人さんの耳には、制止の言葉なんか届きません。

『地球の人型兵器か?!よせ、俺は今は戦う気はない。捕虜を帰してさえくれれば・・・』

「わっ!だれだれ?!」

「・・・敵のロボットさんからの通信です。確か『月臣元一郎』とかいう人でしたね。」

白鳥さんもそうでしたが、この人もまたゲキガンガーに出てくるキャラにそっくりです。

木星って、いったい・・・

「だまれ!おまえらが最初に仕掛けてきたんじゃないかっ!いまさら虫のいいことをいうなっ!」

『それは違う!最初に火星に移り住んだ我々を追い出し、木星まで追いやったのは、おまえ達、地球だ!』

「うるさいっ!そんな昔の戦争のことなんか関係ない!俺は、俺の大切な人を奪ったおまえらを許さないっ!

火星の人たちの、父さんと、母さんの仇っ!」

『・・・やむをえん。不本意だが、相手に・・・』

「待て!待ってくれっ!!」

激突寸前の明人機と敵ゲキガン・タイプ。その間に割り込んできたのは、一機の黒いエステバリス。あれは・・・

「キャプテン・ローウェル」、いえ、白鳥九十九さんの乗っている機体ですね。そのまま明人さんの前に、両手を広げて立ちふさがりました。

「天河君!やめてくれ!頼む!」

「白鳥さん!?いや、白鳥!どういうつもりだよっ!どけ!」

『な、何?!白鳥だと?!まさか、九十九、九十九なのか?!』

「・・・久しぶりだな、元一郎。そう、俺だ。白鳥九十九だ。」

『やはり、生きていてくれたか・・・だが、なぜ・・・地球の人型兵器に・・』

「・・・愚問だな。裏切り者のおまえに説明する義理は、ない。」

『そうか・・・そうだな。確かに、俺はおまえを裏切った。今更弁解の余地もない。

だが・・・』

「・・っ!何訳のわかんないこと言ってるんだよっ!とにかく、そこをどけっ!」

なんだか訳ありのお二人ですが、熱くなった明人さんには関心有りません。かなりじれてきているみたいです。

このままだと白鳥さんもろとも攻撃しかねません。

「何度も言うようだが、それはできない。今ここでマジンを破壊される事は、ユキナが木星に帰ることが出来なくなる事と同義だ。

不本意だが、私は元一郎をこのまま見逃さなくてはならない。」

「見逃す、だとっ?!やっぱりあんたは、木星蜥蜴だっ!表向きは俺達に協力しているふりをして、

いざ実際の戦闘では手を出さないんだっ!ふざけんなっ!」

「そう取られても、仕方がない。だが私は、君と戦う気もまた、ない。だから・・・」

がしゃっ。九十九機が、手にしていたライフルを、落としました。そのまま両の手を広げた格好のまま、明人機に近づいていきます。

「な、何の真似だっ?!」

「今、君が言っただろう?『あんたは、木星蜥蜴なんだ』と。そう、私は木星人だ。君の両親の、同胞の仇だ。

だから、君のその怒りと憎しみを、私にぶつけるがいい。その代わりにユキナと元一郎、二人を見逃して欲しい。頼む。」

「・・・っ!!ふざけるなああああっっ!!」

がきいっ!ガシャアアッ!グシャッ!

「ぐっ!がっ!」

「うわあああっ!」

「な・・」

「あ、明人っ!」

「明人さん、やめてええっ!」

白鳥さんの言葉に逆上した明人さんが、エステに殴りかかりました。通信から伝わってくる、破壊音。

ひしゃげ、折れ、砕かれていく、黒いエステバリス。

「明人、あきとー!!やめて、やめてよー!」

「明人君、やめて!やめてちょうだい!」

「明人さん、やめてください!このままじゃあ、死んじゃう、死んじゃうよー!」

艦長、ハルカさん、メグミさんの悲痛な叫び声。制止の言葉。でも、今の明人さんには届いていません。

私は、目の前の凄惨な光景に、声もありません・・・

「瑠璃ちゃん、お願い!明人さんを止めてっ!私じゃ、私たちじゃ、止められない!」

「メグミさん・・・」

「ルリルリ!私からもお願い!」

「ハルカさん・・」

「あきとー!あきとー!あき・・こんなの、こんなのだめだよ、あきと・・」

「艦長・・」

止める?止められる?私が・・明人さんを?

苦痛にゆがむ白鳥さんの顔。でも・・・殴っている明人さんの顔も、ゆがんでいる・・

叫びとも雄叫びとも分からない声を上げながら、殴り続ける明人さん・・明人さん・・

「ルリルリ!何ぼうっとしてるの?!お願い、このままじゃ死んじゃうわ!」

「瑠璃ちゃん!このままじゃ明人さん、白鳥さんを殺しちゃうよ!」

・・・死ぬ?・・白鳥さんが?・・・殺してしまう?・・・明人さんが?

「・・・・大丈夫です。死にません。」

「る、瑠璃ちゃん?!」

「ルリルリ?!」

私の言葉に、驚く二人。でも、大丈夫。きっと、死なない・・きっと、殺さない・・

「な、何言ってんのよ、ルリルリ?!」

「瑠璃ちゃん!どうしちゃったの?!」

「どうもしません。大丈夫です。明人さんは、殺したりしません。きっと。」

そう、明人さんは、人殺しなんかしません。できません。そう、思うんです。

なぜなら、あの人は・・・あの人は・・・

「そんな・・!そんなこと・・」

「やられちゃえばいいんだ。」

『え?!』

ぼそり、と誰かがつぶやきました。皆が振り向いた視線の先にいたのは・・ユキナさん。

「あ、ユ、ユキナ、ちゃん?あなた、今、なんて言ったの?」

「やられちゃえばいいんだ。あたし達木星を裏切ったお兄ちゃ・・あいつなんか!」

「ユキナちゃん、あ、あなた、なんてことを・・・あなたのお兄さんなのよっ?!」

「うるさいっ!地球女なんかに、何が分かるってのよっ!裏切り者のお兄ちゃんなんか、死んじゃえばいいんだっ!!」

ぱしいっ!

乾いた音が、ブリッジに響きました。

ハルカさんが、ユキナさんの頬を、ひっぱたいたんです。

「な・・・なにすんのよっ?!」

「なんてこというの!ユキナちゃん!あなたのお兄さんなんでしょう?!たった一人のお兄さんなんでしょう?!

死んじゃえばいいだなんて!」

「う、うるさい!うるさい!あんたなんかに、何が分かるって言うのよ!」

「わかるわ!あの時ユキナちゃん、言ったじゃないの!『お兄ちゃんが死んだとき、どれだけ泣いたか』って!

悲しいから、辛いから、お兄さんが好きだったから、泣いたんでしょう?!だったらなぜ、死んでもいいだなんて言えるの?!

死んじゃったら、悲しいでしょう?!今度こそ、二度と会えなくなっちゃうのよ?!それでもいいの?!」

「・・・」

がしゃあああっ!

「!」

白鳥さんの黒いエステが、倒れ込みました。大の字に倒れ込んだ九十九機に、明人さんのエステが近づいていきます。

「・・っ、はあ、はあ、はあ、・・・これで、おわりだああああっ!」

振りかぶったエステの拳。コクピットに、白鳥さんに、振り下ろされていく・・!

「明人さん!」

「!や、やめてえええっ!お兄ちゃんを、

殺さないでええっ!」

「!!」

ドンッ!

どくん      どくん       どくん      どくん      ・・・・・・・・

振り下ろされた、エステバリスの拳・・・月面に、突き刺さって・・・

「・・・なぜ、外した・・・」

「・・・うるさい・・」

「・・憎いんだ・・ろう、木星、が?・・・ぐっ・・お、おまえの、両親の、仇、なんだろう?・・・だったら、なぜ・・・」

「う、うるさい、うるさい!知るかよ!手が、手が勝手に外しちまったんだ!」

「なら、もう一度だ。今度こそ、止めを、刺すんだな・・・」

「で、出来ない、出来ないんだよ!エステが、エステの手が、壊れちまったんだよ!エステの手が、壊れちまったんだよ・・・」

「明人さん・・・」

「明人・・・」

・・・終わりました。そう、終わったんです・・・

 

「エステバリス二機、収容完了しました。パイロット一名負傷しているものの、生命に別状有りません。

それと、敵ゲキガン・タイプより通信が入っていますが?」

「・・内容は?」

「『我、攻撃の意志無し。そちらの状況が落ち着くまで、一時休戦を提案する。』だそうです。」

「・・・メグちゃん、返礼を。『了承した。ご配慮に深く感謝する。』と伝えてちょうだい。」

「・・・了解。」

「一時休戦、ねえ・・・で、艦長、どうするつもり?まさか、捕虜を引き渡す、だなんて言い出すつもりじゃないでしょうねえ?」

明人さんと、九十九さんの戦いは、終わりました。でも、問題が解決されたわけじゃなかったんですよね。

ユキナさんを引き渡すか、否か・・・

とん、とん。誰か、私の肩を叩いています。誰?・・・ミナト、さん?

「・・・ルリルリ、お願い。ユキナちゃんを格納庫まで連れていきたいの。協力して。」

「格納庫、ですか・・・」

「そう、九十九さんの所・・・」

なるほど。そして、そのまま・・・分かりました。何とか、やってみましょう。

『オモイカネ。ブリッジの扉、私たちが出ていった後にロックできる?』

《可能です。瑠璃さん達が退出した後に扉をロックすればいいんですね?》

『うん、そう。お願いね、オモイカネ。』

「・・・瑠璃ちゃん、どう?」

「メグミさん・・オーケーです。ブリッジから逃げ出しさえすれば、何とかなります。」

「じゃ・・・いくわよ!」

艦長とエリナさんがなにやら議論している間に、私たち四人はブリッジの扉に向かいました。

なんとか、上手く逃げ出せれば・・・

「おおっと、どこへ行くつもりかな、お嬢さん方?」

後少しのところで、私たちの前に、アカツキさんが立ちふさがりました。

やっぱり、マークされてましたか・・・

「く・・・」

「そうそう逃がすわけにはいかないんだよ、お嬢さん方。ま、ここはおとなしく・・」

「てえええいっ!」

え?ユキナさん?!

キンッ!

あ・・・アカツキさん、前屈みにうずくまってます。ユキナさん、今、何したんですか?

「見たか!木連式柔術・無双金的破!」

え、と・・・もしかして・・・聞かない方がいいのかな?

「・・・痛そー・・・」

「と、とりあえず、逃げるわよ!」

「あ、あなた達!待ちなさい!アカツキ君!何やってんの?!」

「ご、後生だよ、エリナ、くん・・・」

もう、手遅れです。扉はもう開きません。オペレーターの私がいなければ、解除もできません。

艦長なら出来ますけど、きっとそんなことはしないでしょうから、安心です。

とにかく、脱出成功、ですね。

 

「あーあ、こりゃまた派手に壊したもんだ。ったく、何やってるんだ、おまえさん達は。」

「・・・すんません・・」

「あー・・・うぉほん。ま、まあいい。エステなんざすぐ直せるからな。けど、パイロットはそうはいかねえ。

幾ら腕のいいメカニックでも、命ばかりは作れねえからな。おおーい、そっちのエステのコックピットは、どうだー?開いたかー?」

「はーい、班長ー!今パイロットを降ろすところです!あっちこっち怪我してますけど、生きてますよー。」

「ウリバタケさん!九十九さんは、どこ?!」

「おおっとー、びっくりさせるねい!なんだなんだ、女四人連れだって?!」

「そんなこと、どうでもいいの!九十九さんは、どこ?!」

「あ、ああ。あそこだ。」

「・・いた。ほら、ユキナちゃん。」

「あ・・・で、でも・・・あたし・・・」

「いまさら何遠慮してるんですか?ちゃっちゃといっちゃってください。」

「わ、わかったわよ!・・うん。」

整備員の人たちに肩を貸してもらっていた白鳥さん。近づいてくるユキナさんに気づくと、ゆっくりとこちらに向かって歩いてきました。

そして、二人、立ち止まり・・・

「ユキナ・・・」

「・・・お、お兄ちゃん・・・ご、ごめんな、さい・・・」

「・・・いいんだよ、ユキナ。もう、いいんだ・・・」

「・・・う、うわあああん!お兄ちゃーん!」

白鳥さんにすがりついて、泣いているユキナさん。そして、そのユキナさんの頭を優しくなでている白鳥さん・・・

「よかった・・・ですね・・・ミナトさん・・・」

「・・うん。ありがと、メグちゃん。ルリルリ。」

「ミナトさん・・・ありがとうございました・・・」

「うふふ・・どういたしまして。」

 

「明人さん・・・」

「瑠璃ちゃん・・・俺、だめだったよ・・どうしても、殺せなかった・・・父さんと、母さんの仇なのに・・・どうして・・・どうしてっ!?」

がくり、と膝を落とし、拳で床を殴りつける明人さん。小刻みに震えているその体・・・

私は、そっと、明人さんの頭を抱きかかえました。私よりも大きいはずの明人さんが、今はとても小さく、幼子のように感じました・・

「明人さん・・・明人さんには、人殺しなんか、出来ません・・・」

「・・・瑠璃、ちゃん・・・」

「だって、だって、明人さんは・・・コックだから・・・私の・・大切な・・コックさんだから・・・コックに、人殺しは出来ません・・・」

そう。あの日から・・・あの、雪の降る日から、あなたは・・・私の・・・大切な・・・

私だけの・・・コックさんだから・・・

「・・・う・・ううう・・・」

私の腕の中で・・・

私の胸の中で・・・

明人さんは、泣きました・・

まるで、幼子のように・・・

「じゃあユキナ。その書状、草壁中将に必ず届けてくれ。頼んだぞ。」

「まっかせてよ!必ず、届けるから!」

「草壁中将は、以前から現戦力では地球攻略が困難なことを憂いていた、正義と平和を愛する熱血漢だ。

これ以上の戦争継続が、お互いの国力を削ぐだけだということに、お気づきのはず。この和平案、必ず真摯に検討なさってくれるはずだ。」

「分かってる分かってるって。」

「・・・一つ、聞いてもいいか、ユキナ?」

「ん?何?」

「いいのか?和平案、反対なんじゃないのか?」

「なーに言ってんの、今更!あたしだって戦争が好きな訳じゃないんだから!それに・・分かったんだ。地球にも、いいヤツは、いるんだって・・・」

ちらり、とユキナさん、ミナトさんの方を見ました。にこり、と笑うミナトさん。

「じゃ、もう行くね。お兄ちゃん。」

「ああ、気を付けてな。」

「うん!」

『そろそろ、いいか?出立の刻限だ。』

「元一郎・・・」

『九十九・・・』

「元一郎。俺は、おまえを許した訳じゃ無い。だが、今はおまえしかユキナを託せる者がいない。ただ、それだけのことだ。」

『・・・分かってる。だが、これだけは、覚えていて欲しい。あの時は、ああするしか方法がなかったのだ。皆を救うためには、あの方法しか・・・』

「過ぎたことだ・・・今の俺には、関係ない・・・」

『・・・では、行くぞ・・・・跳躍!』

フォン

・・・こうして、ナデシコ艦内を騒がせた台風娘・ユキナさんは、木星に帰っていきました。

でも、また会えるはずです。そう、今度は、平和になったときに・・・

「・・・なああんて終わり方、出来るはずないでしょうが。」

え?私たちが振り返ると、そこに立っていたのは・・・アカツキさん!それとエリナさん、さらにその後ろには、武装したコスモスのクルー。

でも、どうやってブリッジから?

「おやおや、不思議そうな顔しているねえ。なんで、ブリッジから出られたか、って?

簡単なことさ。こいつを、抜き取ったんだよ。」

アカツキさんが見せたのは、ナデシコの作動キー!!あれを、抜き取ったんですか!

「艦長がロックを解除してくれたらよかったんだが、案外強情でねえ。仕方ないから一回作動キーを抜いて、僕のパーソナルで再起動したんだ。」

そうか・・ナデシコの作動キーは艦長と、ネルガルの会長にしか扱えません。

でもこの人は、ネルガルの会長だったんでした・・・

「さて、悪いが君たちの身柄は拘束させてもらうよ。なにせこれだけのことをしでかしたんだからねえ。」

「艦長は、どうしたんですか?」

「彼女はもう艦長としての任を解かれたよ。すでに別室にて、丁重に監禁中だ。」

「・・・ブリッジ要員がいなければ、ナデシコは動きませんよ?」

「ご心配なく。ナデシコはこのままコスモスとドッキング。地球に帰還することになっているからね。君たちがナデシコを動かす必要はないんだよ。

ま、少し部屋で休むといいよ。」

「地球に?」

「そう。地球まで捕虜を移送し、宇宙軍に引き渡す。」

捕虜?どうして?だってユキナさんは、もう・・・

「なにせ敵さん、宇宙軍の通信用チャンネルを使って、思いっきり『捕虜を返せ』と言っちゃってるからねえ。

さすがに誤魔化しきれなかった。引き渡せと言われては、引き渡さない訳にいかないからねえ。」

「引き渡すも何も、もう捕虜は逃げちゃいました。不可能です。」

「捕虜を得た事を隠蔽し、なおかつ逃がしただなんて、言える訳ないでしょうが。ま、ご心配なく。代わりの人間がいるからねえ。」

代わりの人間?って・・・まさか?!

「そ、正解。そこにいる白鳥九十九くんさ。」

 

・・・続く

 

1999/10/28 かがみ ひろゆき

                                   ///あとがき///

こんにちは。かがみ ひろゆきです。今回のナデシコif、いつもよりボリューム・アップしてお送りいたしましたが、いかがでしたでしょうか?

さすがに今回は疲れた・・・

話は変わりますが、このナデシコif「誰よりも早く・・・」、大塚りゅういち氏のHPにて公開していただいておりますが、個室に備え付けられた

カウンターが、もうすぐ一万を数えようとしております!これもひとえに皆様のご贔屓のたまもの。本当にありがとうございます!

そこで一万ヒットを記念して、すぺしゃる企画!

名付けて「11111ヒット踏んじゃった人のリクエストに応えて小説を書いちゃうぞ!」企画!

・・・そのまんまですね。ひねりがないなあ(笑)とにかく、11111カウンターを踏んだ方、メールにてお知らせくださいませ。

あなたのリクエストにお応えして、小説をお書きいたします。ジャンルは、一応問わないつもりです。自分の書ける範囲内ですけど・・・

なぜ、一万ヒット記念なのに「11111」カウンターなのかと言いますと、この企画を思いついたときにはすでに9500カウンターを超えていて、

時間的な余裕がありませんでしたもので。(苦笑)

それではナデシコif、次回も是非お読みください!

 

                                     −−−次回予告−−−

アカツキ:やあやあやあ、みんな元気にしてるかい?今回のナデシコif、楽しんでもらえたかい?そりゃあよかった。

      え?次回はどうなるんだって?あせらないあせらない。

      んじゃま、いっちょいきますか。

      

      彼らは、悪いことなどしていないはずだった。戦争だからといって、人を殺すことがいいはずはないんだと思ったのだ。

      だから、逃がした。だから、捕まった。人の善意は、より大きな「戦争」と言う名の悪意に、このまま飲み込まれてしまうのだろうか?

      彼らは、大切な人とも別れ、艦を降りた・・・

      次回機動戦艦ナデシコif、第十六話「それは『早すぎた平和への鐘』」

      楽園は、そこにある・・・

 

前回の答えは「機動戦士Zガンダム」でした。正解者は真神(仮)さん、Hrrachさん、 wakamatuさん、 Katuya Masudaさん、 Kitaさん

でした。おめでとう!なお、次点としてATORMさん。「ガンダム」というのは合ったんですが・・・おしい!さて、今回はちょっとヒントを。

これはWOWWOWで放送されていたノンスクランブルのアニメ放送でーす。分かったかな?


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