機動戦艦ナデシコif「誰よりも早く貴方に出会っていたら・・・」

第十四話:遠い星から来た「カレカノ」

               ===第一夜===

 

 

「かんべんして。」

もう何週目でしょうか?私たちが乗るナデシコは、現在地球衛星軌道上を周回中です。

ぐるぐる、ぐるぐる。幾ら綺麗な光景でも、こうも長時間見させられると飽きが来ます。

あのゲキガンタイプとの戦闘後、ナデシコは補給を受けてから、明人さんのいる月に向けて出発するはずでした。

ところが敵の新兵器であるゲキガンタイプを収容、調査を始めた途端、緊急発進するようにエリナさんが指示を出してきたんです。

補給はどうするんですかって艦長が聞いてみても、とにかくすぐ発進しろの一点張り。

もしかして月に直行するのかと思いきや、そのまま軌道上で待機するように、だって。

おまけに敵もいないのに非常警戒態勢。説明もいっさいなし。なにがなにやら訳がわかりません。

「おっまたせー。瑠璃ちゃん、ミナトさん、メグちゃん!交代の時間だよー。」

相も変わらずのお気楽艦長。現在非常警戒態勢なので、ブリッジは二交代態勢でシフト中。

私とメグミさん、それとハルカさんがA班でそれぞれ火器管制、通信、操舵を担当。

B班は艦長、アオイさん、エリナさんがチームを組んでます。

非常警戒態勢下では一人での艦内行動は禁止されていて、食事なんかも三人一組で取っています。でも、敵もいないのに何ででしょうね?

「艦長、月から通信が入っていますけど。」

交代間際に、月から通信が入ったとの報告です。もしかして、明人さんから?

「ジュンくん、メインスクリーンに出して!明人からだよ、きっと!」

途端に艦長、喜色満面と言った感じです。感情がストレートな人です。

早速映し出されたモニターに映ったのは・・・

【コスモス】艦長、キャプテン・ローウェル・・・

「聞こえるか、ナデシコ。こちらコスモス艦長・・・どうした?」しゅこーぱー

「・・い、いえ、別に・・あはは・・と、とにかくご用件はなんでしょうか?」

あからさまに落ち込んだ艦長、慌てて作り笑いです。明人さんじゃないと分かった途端、

これです。まあ、私たちも「明人さんからかもしれない」と思ってましたので、少しがっかりしてますけど。

「先ほどネルガルからの命令が下った。衛星軌道上に待機中のナデシコと至急合流せよとのことだ。

直ちにそちらに向かう。合流予定時間は約三時間後。以上だ。」しゅこーぱー

「あ、あの、ちょっと待ってください!」

そのまま通信を終わらせようとするキャプテン・ローウェル。艦長慌てて引き留めてます。

そう、まだ肝心なことを聞いてません。

少なくとも、私には、私たちにとっては何よりも大事な事・・・

「何だ?」しゅこーぱー

「あ、あのー、明人は、どうなるんですか?まさか、そのまま月に居残るんじゃあ・・」

「・・・ふっ、心配するな。天河明人はこのコスモスに乗ってる。三時間後には再会できるだろう。」しゅこーぱー

「ほんとですね?!分かりました!では三時間後に!」

艦長、途端に元気になっちゃって、敬礼なんかしてます。でも、艦長だけじゃありません。

ブリッジにいるほとんどの人が喜んでくれてます。・・・もちろん、私も。

三時間後・・ですね・・・

 

「ね、瑠璃ちゃん、ミナトさん。ちょーっと、いいかなあ?」

艦長達と交代して休息に向かう私たち。一緒に通路を歩いているメグミさんが、私とミナトさんに何か話しかけてきました。

何でしょう?

「なあに、メグちゃん?」

「あのー、えへへ・・ちょーっと寄り道したいんだけど、いいかなあ?」

「寄り道、ですか?」

「うん、あのね、ちょーっとお風呂にはいりたいなー、なんて。」

お風呂、ですか。普段なら問題ないんですが、今は・・

「今は非常警戒態勢中で、入浴時間も決まった時間でないと・・それに、やっぱり入浴時にも複数で行動しなければいけませんので・・」

「う、うん、まあそれはそうなんだけど・・だって非常警戒態勢っていっても、敵もなにもいないし・・

それに、後三時間もしたら・・・帰って、くるでしょう?」

「あ、そう言うことかー。ふふっ、メグちゃんかっわいいー。」

「や、やだな、ミナトさんからかわないでください!」

何のことでしょうか?

「ま、そういうことなら、ねえルリルリ。一緒に入っちゃいましょうか。」

「え?でも、時間が・・・」

「大丈夫、大丈夫。一人で入ったりしなければ問題ないって。ルリルリも女の子だから、分かるでしょう?

男の子って、シャンプーの香りのする女の子にけっこーくらくらきちゃうって言うし。明人君があともう少ししたら帰って来るんだし、

綺麗に玉の肌を磨いて迎えたいわよねー。」

シャンプーの香り、ですか・・・そういうもんでしょうか?

「じゃ、早速いきましょうか。」

「ち、ちょっとミナトさん・・」

「さあさあ瑠璃ちゃんも、早くー。」

・・・まあ、いいでしょう。いつものことですから。お風呂くらい大した問題にもならないでしょうし。

 

 

かぽーん ぱしゃ

さすがに警戒態勢中だけあって、お風呂に入ってるのは私たち三人だけです。ただでさえ

戦艦とは思えぬ広さのこのナデシコ浴場。確かに気持ちがいいですよね。

「んー、いい気もちー。しっかし、なあんで非常警戒態勢なのかなあ?ねえ、ルリルリ。」

「さあ?私もよく知りません。艦長も知らないくらいですから。」

「へえ?だって、命令を出してるのって、艦長じゃなかったっけ?」

「確かに命令は艦長から出されていますけど、そうするように指示したのは、エリナさんですから。」

「なあんか、変よねー。ミスター・ゴートやウリピー達整備班の連中も、なんかこそこそやってるみたいだし。」

「あの人達がこそこそやっているのは、いつもの事じゃあないですか。気にしすぎですよ。」

ま、そうかもね。この間なんか女湯に隠しカメラ仕掛けようとして、袋叩きにあっていたし・・・

「ふ、ふ、ふーん、ららら・・」

鼻歌なんか歌いながら、メグミさん一生懸命お肌を磨いています。なんか、ほんとに楽しそう。・・・よく見ると、結構、胸・・あるんですね。

隣にいるミナトさんも、そう。艦長だって・・・ちょっと視線を下の方に向けてみて・・

まあ、まだ私は少女ですから・・・って、え?

よく見ると、湯船の中に、何かがゆらゆらとゆらめいています。何でしょう?

タオル・・じゃないし・・・なんだか、海藻か何かみたい。

「ミナトさん、あれ・・・何でしょう?」

「んー?なあに?」

ざばっ!

途端に、海藻が立ち上がりました。いえ、海藻じゃありませんね。

人です。人間です。海藻に見えたのは、髪の毛だったみたいです。

「お、おとなしくしなさひっ!抵抗しなければ手荒にゃまねはしらほられ・・・」

くらくら ばっしゃーん。

・・・何、これ?突然湯船から浮上してきたこの人、そのままくるくる回りながら倒れちゃいました。

ミナトさんも私も、目が点です。

「な、何、何?!誰?!」

身体を洗っていたメグミさん、物音にびっくりして慌ててこちらにやってきました。

「あらー、・・・のぼせちゃってるみたいよ。」

「誰なんです、この人?」

「さあ?知りません。」

古典的な表現で目を回して湯に浮かんでるこの人。

年の頃は13.4歳って所ですか。

ショートカットの髪。ピンク色の、まるであの「ゲキガンガー」に出てくる、ええと、

確かナナコさんとかいうのが着ているような妙な戦闘服を着ています。

いったい、誰なんでしょう?この女の子。

 

 

ぱたぱた。

とりあえずその女の子、このままにもしておけないってんで、とりあえず脱衣所の長椅子に寝かせました。

ミナトさんがうちわでぱたぱた扇いでたりしています。

「ねえ、この娘、見覚えないよねえ?」

「ええ。少なくとも新しい乗組員が乗船したと言う報告は、受けていません。」

「じゃあ、・・・もしかして、密航者?」

「その可能性が高いですね。」

考えられませんが、それしかないでしょう。でも、いつの間に?地球で停泊していた港は軍関係の所有地。

どう見ても軍人に見えないこの女の子が、警戒厳重な監視の目をくぐり抜けてこのナデシコに密航?

・・・できますかね?いえ、それよりもなぜ軍艦なんかに?

「・・・うーん・・・」

「あ、気が付いた。どう、気分は?」

「・・・?・・・・!!?」

がばっ!!

女の子が気が付いたようです。慌てて腰の辺りを探っています。

もしかして・・・アレを探してるのかしら?

「もしかして、これ?はい。」

「え?ち、ちょっとミナトさ・・?!」

ミナトさんが女の子に差し出したのは・・・そう、拳銃です。

先ほどお風呂から現れたとき、彼女が握っていた・・・危ないからとりあえずミナトさんが預かったんですが、何で返しちゃうんですか?

そんなことしたら・・

きょとんとした表情でミナトさんと拳銃を交互に見ている女の子。やがて慌ててミナトさんの手から拳銃を取り返しました。

そのまま・・あ、やっぱり。

拳銃をそのまま構えちゃいました。思わず息をのむ私とメグミさん。

でも・・・ミナトさんはまるで動じません。

そのまま・・・しばしの沈黙・・・

「・・・あんた、なんで・・?」

「だめよ、まだ寝てなくちゃ。頭がくらくらするでしょう?」

「!ば、バカにするら、ららら・・・」

あらら・・また目を回してます。さっきまで湯あたりしてたのに、いきなり立ち上がって大声出したりするから・・・

「ほらほら。だめよ、もうしばらくおとなしくしてなさい。さ、座って。」

ミナトさんにうながされて、女の子は黙ってイスに腰を下ろしました。拳銃は持ったままですけど。

「・・・なんで?なんで銃を突きつけられても、あんた平気なのよ?」

「んー・・・何でと言われてもねえ・・あなたが、悪い子には見えなかったから、かな?」

「こ、子供扱いしないでよっ!」

「あら、だってあなた、どう見ても大人には見えないけどなー。」

「わ、私はこう見えても軍人なのよっ!そりゃ正式には予備役だけど・・・」

軍人?こんな小さな女の子が?

「軍人って・・あなた、どこの軍人さん?」

「ふっふーん、聞いて驚いかないでよ!あたしは・・・ええっと・・」

ごそごそ

「?何、してるんですか?」

「ち、ちょっとあんた、覗かないでよ!・・・あ、あったあった・・えー、こほん。

いいこと、耳の穴かっぽじってよーく聞きなさい!私は木星圏ガニメデ・カリスト・エウロパ・及び他衛星国家間反地球共同連合体、

突撃優人宇宙部隊所属、白鳥ユキナ!恐れ入ったか!」

・・・アンチョコ見ながら、何威張ってるんだか・・・・あれ?今、木星って・・

「木星・・って、今言わなかった?」

「ええ、そうよ!私は栄えある木星圏・・・中略、反地球共同連合体、突撃優人宇宙部隊所属、白鳥ユキナ!」

「・・・あのー、何の冗談ですか?」

「じ、冗談とはなによ?!失礼ねっ!」

だって、冗談としか思えません。その理由は・・

「人類は、まだ火星でしかその領域を広げていません。木星の軍隊だなんて存在しません。」

「・・・あんた、本気で言ってる?」

こちらをにらんでいる・・ユキナさん。・・・冗談じゃ・・ないみたいですね・・・

 

あれから、二時間経過しました。ユキナさん、あれから延々と木星・中略・連合体について説明してくれました。

もっともかなり脚色されていて、このままじゃあわかりにくいんで、私が簡潔にまとめてみました。

 

今から百年ほど前、月のコロニーで独立運動が起きたそうなんです。

火星のテラフォーミングが始まり、地球という狭い箱庭の中での国家間の争いが薄れ始めた頃。

結局その独立運動は、独立派が追放されて幕が下りたんですが、(ここまでは、歴史の教科書にも載ってるんで知ってましたけど)

その追放された独立派の人たちは火星に逃げ込んだそうなんです。そのまま火星に根を下ろし、再起を図ろうとしたんだけど、

地球はそれが面白くなかったらしく、なんと核を打ち込んで皆殺しを計ったそうなんです。

テラフォーミングが始まったばかりの火星、ろくに人が住める場所もなかったのに・・・

かろうじてわずかな人間が、核の洗礼を逃れて、木星方面へ逃走。

もっとも火星よりも遙かに過酷な環境の木星で、わずかに残った人たちが生き残れるはずがない・・・そう、思われていた。

けれど、彼らは、生き延びた。”力”を、手に入れて。

そう、それは、人類以外の知的生命体が残した数々のオーバー・テクノロジー。

無人兵器群、重力兵器、相転移エンジン、そして、空間跳躍法・・”ボソン・ジャンプ”

そして、彼らは帰ってきた。

彼らを抹殺しようとした、”悪”・・・地球への復讐のために。

いえ、彼ら”木星・連合”から言わせれば、正義の鉄槌だそうですが。

エイリアン、一皮むけば、同じ”人”。

私たちは、地球を守るために戦ってきた。そう、思ってきた。

けど、守るも攻めるも同じ人間。結局過去の醜い国家間の争いと同じ。

正義なんて、どこにもなかった・・・

 

にわかには信じられない、ユキナさんの教えてくれた、裏の歴史。

メグミさんもハルカさんも、私も、押し黙ったままです。

木星蜥蜴の正体・・私たちと同じ人間・・・それじゃあ私たちがしてきたことって、ただの人殺し、ってことなんでしょうか?

「な、何よ、青い顔して黙っちゃって・・ほんとに知らなかったの?」

自分の発言が、私たちに大きな衝撃を与えたことに、ユキナさん少し戸惑い気味です。

「・・・ねえ、今まで私たちが戦ってきた木星の兵器・・・アレにも、その・・・

あなたみたいな子供が乗っていたり、したの?」

ハルカさんが、おそるおそるといった感じでユキナさんに聞いています。

「こ、子供扱いはやめてって、言ったでしょう!・・まあ、いいわ。答えてあげる。跳躍法は、生身の人間は送れなかったの。

だから今までの兵器は無人。人が乗り込んで跳躍できるようになったのは、つい最近よ。」

・・・よかった。かろうじて私たちは、人殺しをせずに済んでいたようです。

でも、これからの戦いは・・・

「さあ、これで分かったでしょう?あなた達と私は敵同士。あなた達は、これから人質になってもらうわ。さあ、立ってちょうだい!」

・・・人質?私たちを?

「わたしたちを人質にして、どうするの?」

「あ、あんたバカ?!決まってるでしょうが!この船から脱出するの!」

脱出って、ナデシコから?・・・あ、そうか。今の非常警戒態勢って、これが原因だったんだ。

確かにまっとうな手段じゃあここからは逃げ出せそうにありませんからね。

でも、どうしたもんか・・・

「・・・ねえ、ユキナちゃん。ここから逃がしてあげよっか?」

「だからあ、あんた達を人質にして・・・って、え?」

は?ハルカさん、今、なんて?

「逃がしてあげる。私が。」

きっぱりと言い切ったハルカさん。ユキナさんも、メグミさんも、そして私も、目が点です。

「お願い、メグちゃんも、ルリルリも、協力してちょうだい。この子を、ここから逃がしてあげたいの。」

・・・・目が、マジですね。どうやら本気みたいです。

これって、もしかして、すっごいやっかいな状況では?

 

・・・・・・・・続く。

1999/10/7 かがみ ひろゆき

                               <<<<あとがき>>>>

こんにちは。かがみ ひろゆきです。以前にもお知らせしたとおり、「白鳥さん」登場です!!

はあー、やっと出せたよ、ユキナさん。これで予告のナレーターがまた一人・・・って、そう言う問題じゃなくて。

さて、遂に明かされた木星蜥蜴の正体!次回ではさらに驚きの事実が!

果たして彼女は白かピンクか、それともフリル付き?おそらくサイズはAカップ!(意味不明)

では次回も機動戦艦ナデシコifを、みんなで読もう!

 

                                  >>>次回予告<<<

ユキナ:天国のおにいちゃん、見守ってくれてる?ユキナは、お兄ちゃんの意志を継いで地球の奴らと戦っています。

     大丈夫、月読さんも助けてくれるし、草薙中将の後ろ盾もあるし。今は敵の戦艦の中だけど、大丈夫、必ず脱出してみせるから!!

     次回機動戦艦ナデシコ「遠い星から来た『カレカノ』」===第二夜===

     お兄ちゃんをいじめる者は、このドールナイツが許さないっ!・・・あれ?

 

前回の予告は、「少女革命ウテナ」でした。正解者は思兼さん、真神(仮)さん、KOUKYOUさん、Kitaさんの四名でした。おめでとう!

そういえば「キャプテン・ローウェル」の正体についてもいろいろ予想をいただいておりますが、遂に正解した方がおります。

過去のお話にヒントがありますので、皆さんも予想してみてください。ちなみに正解者はKitaさんでした。答えは、うーん次回で!


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