機動戦艦ナデシコif「誰よりも・・・」の、はずなんだけど・・・
ちょっとお休み。さて今回は・・・
「瑠璃ちゃんのこそこそ潜伏日誌」

              

                  −−−A面−−−

 

どうも、こんにちは。星野瑠璃です。

今私は、ナデシコ食堂の奥、エアーダクト内の隠し部屋で潜伏中なんです。

何でこんな所にいるのかは、本編を読んでいる方ならご存じでしょうが。

読んでいない方は、今すぐ読んでください。て言うか読め。

《る、瑠璃さん、読者に対してそれはちょっとまずいのでは・・・》

『こんな寒いところにこもりっきりじゃ、ストレスがたまるんです。たまには発散しないと。』

《憂さ晴らしに読者にけんか売ってもしょうがないと思いますが・・・》

『文句ある?オモイカネ。』

《・・・ありません。》

『よろしい。』

さて、とにかくこんなところにこもりっきりだと、とにかくヒマです。娯楽といえば

メグミさんがパーソナリティーやってるラジオを聴くか、テレビを見るか、ぐらい。

さて、何か面白い番組がないものか・・・

『オモイカネ、何か面白い番組やっていない?』

《少々お待ちください・・・ただいま衛星放送で放映中の番組がありますが?》

『衛星放送ね・・・あんまりメジャーじゃないから読者ウケするかどうか・・・』

《は?何のことですか?》

『・・・何でもありません。とりあえずそれお願い。』

《かしこまりました。では・・・》

 

               「ザ・ビッグおー」

 
                Cast in the name of GOD. Ye not guilty

 

私の名前は、ロジャー・スミス。記憶を失った町、パラダイム・シティーには必要な仕事、

ネゴシエーター(仲介人)が、私のもう一つの名前だ。

ネゴシエーター。それはトラブルを起こした両者の間に立ち、ありとあらゆるもめ事を平和的に、

話し合いでの解決に導く仲介者。納めるトラブルの種類は様々だ。

ビルのオーナーと、そのビルに住む居住者との立ち退き問題から、

会社にとっては公開されると困る記事を書いた新聞記者との、記事差し止めを巡る金銭的トラブル。

そして、犯罪者との交渉もたまにある。

誘拐。こういった事件は、金持ちの依頼人にとっては、警察に届けるよりも、

私のようなネゴシエーターに依頼して仲介を頼む方が、はるかに安全かつ合理的だ。

今回も、ありふれた人質誘拐事件のネゴシエートかと思ったが、今度の仕事はちょいとばかりやっかいな事になってしまった。

そういう時は、ビッグオーで乗り出すまでだ。そして、事件は解決した。

・・・解決した、はずだったが・・・

今回ばかりは、かなりやっかいな事になってしまった・・・

救出した人質が、実はアンドロイドであったのだ。いや、アンドロイドそのものは、別段珍しい物ではない。

問題は別にある。

依頼人が死亡してしまった為、行き場を無くしたそのアンドロイドが、私の屋敷に住み込みで働いて

ネゴシエートの代金を払うと言い出したことだ。私の身の回りの世話をする人間は、現在執事のノーマンただ一人。

彼もやや高齢ではあるし、それならばと許可したまではよかったのだが・・

 

・・・私は、さわやかな朝の目覚めをとても大切にしている。

だがこの数日、その私のさわやかな目覚めを、邪魔する者がいる。

あいつだ。あのアンドロイドのせいだ。今朝も今朝とて・・・

どんがらがっしゃーん!

・・・ほら、やった。まただ。

ずかずかずか。バタン!

 

「来栖川製アンドロイド、HMX−12・マルチ!」

「ふえええ!すびばせんご主人様ー!またやっちゃいましたー!」

 
  Episode ・X MULTI MULTI

 

来栖川製アンドロイド、型式番号HMX-12。通称マルチ。カタログには汎用人型決戦兵器・・・じゃなくて、

汎用人型メイドロボとあったが、おせじにも役に立つとは言い難い。

いや、はっきり言ってかなりどじ、である。

おとといはマイセンの皿、昨日はリモージュのティーセット。今日は・・・よそう。壊れた物は、元には戻らない。

とにかくここ数日の間にマルチに壊された食器は数知れない。

本人の話では『ご主人様においしい料理を食べてもらおうとしただけなのに』だそうだが・・・

 

「ごしゅじんさまー!朝食の支度が出来ましたー!今度こそ、上手くできたはずですー!」

『今度こそ』・・・か・・・ふ・・・

かちゃかちゃ・・

「ど、どうですか?ご主人様?」

「マルチ・・・スクランブル・エッグは半熟が基本だ。ちなみにこれは、焼きすぎ・・・いや、焦げている。」

「す、すびばぜんー!お体のことを考えたら、よく火を通した方がいいかと思ったんですうー!えぐえぐ・・」

「ノーマン・・・料理の基礎を、よく教えてやってくれ・・・」

「はい、ロジャー様。」

 

ふう。まったく、あれではスクランブル・エッグではなく、ただの炒り卵だ。

アンドロイドなんだから、料理のレシピぐらい記憶しているはず何だが・・・

どうもあのマルチは、アンドロイドのくせに不器用というか、学習機能が無いというか・・・本当にアンドロイドなのか?

「とおおりゃああああ!」

・・・おまけに、あのかけ声だ。掃除をするとき、マルチは必ずあのかけ声をかけて掃除をする。

いったいどこのどいつがあんなことを教えたのか・・・

「おお、これはこれは・・・ずいぶんと勇ましいですな。」

「ノーマン!」

 

記憶を失った町、パラダイム・シティーにも夜は来る。

よどんだ昼の喧騒は消え失せ、町は、人が失ってしまった星の輝きをその身にまとう。

夜風が、心地よく私の頬をなでる。ゆっくりと手の中のブランデーグラスを回し、

琥珀色のその液体を、喉へと流し込む。燃えるようなその熱さが、これからの熱い一夜への火種となるのか・・・

「ご主人様・・・」

微かな、消え入るような声が、私の背後から聞こえてくる。ゆっくりと振り返る私の瞳に映る、可憐な少女。

華奢な肩。美しいエメラルド・グリーンの髪。

「マルチ・・・支度は、出来たか?」

私の言葉にマルチは、こくり、と小さくうなずいた。その顔はほんのりと赤く、

耳まで赤くして・・・いや、耳は無かったな・・・とにかく、その姿は妖精のように儚く、可憐だ。

「あの、ご主人様・・・優しくして、くださいね・・・」

うつむき加減で、その小さなこぶしを胸の上で握りしめながら、マルチは言った。

私は、女性には常に優しくしているつもりだ。たとえそれがアンドロイドだとしても、だ。

そっと彼女の肩に手を回し、軽く抱き寄せる。そして、寝室へと並んで歩き始めた。

私とマルチが一夜を共にするのは、実はこれが初めてだ。

彼女がこの屋敷に来た辺りから私への、ネゴシエートの仕事の依頼が多数舞い込んだ為忙しく、その機会が無かったからだ。

彼女には朝から悩ませられ続けてきたが、今はそれすらも些細な事の様に思えてくるのだから、不思議なものである。

彼女の制作者は、かなりリアリズムを追求する性格の持ち主だったようだ。

マルチの身体機能そのものは、普通の人間と何ら変わりがない。

まったく、心からの感謝の念を禁じ得ない。

そして、今宵こそはその芸術品を、思う存分に楽しむとしよう。そう、今宵こそは・・・

「ロジャー様、お客様がお見えですが。」

「ノーマン、いきなりなんだ、こんな時に・・・客だと?」

「はい。どうしてもお会いになりたいと。」

「ノーマン。見ての通り私は忙しい。無粋な客はとっとと追い返してくれないか。」

「いえ、それが・・・」

「そうはいかん。ロジャー・ザ・ネゴシエーター。」

無粋な客が、無粋にも許可も取らずに上がり込んできた。

その客の名は、ダストン少佐。かつては軍警察の同僚であった男。

「これはこれは、勇敢な軍警察どの。こんな夜更けにいったい何のご用ですかな?」

「何の用か、だと!とぼけるな!」

「とぼけるも何も・・それとも、私が犯罪でも犯したとでも?」

「まだしらを切るつもりか・・・おまえはかつて同じ職場の同僚だった。軍警察として、警察官として、職務に忠実な愛すべき警官であった。

それが・・このような犯罪を犯すとは・・・」

「だから、いったい何の罪を犯したと・・・」

「よかろう、今はっきりと言ってやる。おまえが犯した犯罪は・・青少年保護法違反だ!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」

瞬間、私は彼が何を言っているのか分からなかった。青少年保護法?違反?私が?

「市民から通報があったのだ。この屋敷の人間が、未成年の少女を拘束し隷属させていると!

信じられないことだが、通報を受けた以上確認はせねばならない。私はおまえを信じていた。だが、だが・・・」

「ち、ちょっと待ってくれ、ダストン。私が少女を隷属させていると?一体何を根拠にそんなことを・・」

「では、おまえの側にいるその娘は何だ!」

娘?今、私の側にいるのは・・・マルチ・・・・・・

!?ま、まさかこいつの事を言っているのか?

「ち、ちょっと待ってくれ、ダストン。こいつはそういうんじゃない。こいつは、アンドロイドなんだ。」

「アンドロイド、だと?・・・・ロジャー、嘘をつくのならば、もっとましな嘘をつけ!こんな精巧なアンドロイドが存在するはずが無かろうが!」

確かにマルチは、現存する他のアンドロイドに比べたらかなり人間に近い。

いや、見た目や性格、行動も十四、五歳の少女そのものだ。

彼女がアンドロイドだと聞かされても、容易に信じることはできないだろう。いや、この場合信じてもらわねば困るのだが。

「嘘じゃない!ならば直接マルチに聞いてみるといい!」

「そうさせてもらうとしよう。おい、おまえ。マルチ・・とか言ったな?おまえは何者だ?おまえはなぜこの屋敷にいる?」

「あ、はい。私は、ご主人様の忠実な・・・」

「ご、ご主人様だと?!」

「あ、いや、その呼び方は・・・」

「黙ってろ!な、ならおまえはなぜこの屋敷にいる?!」

「あ、はい。私は、ネゴシエートの代金を、その、私のこの体でお支払いするために・・(ぽっ)」

「連行しろ!服など着せてやる必要は、無い!!」

 

・・・私の名は、ロジャー・スミス。元ネゴシエーターだ。

今の私は、寒く冷たい鉄格子の中。どうしてこんな事になったのだろう・・・何がいけなかったのだろう・・・

・・・よそう。過ぎたことだ。忘れたまえ。ロジャー・スミス。

「ロジャー・スミス。面会だ。」

 

「ごしゅじんさまー!差し入れを持ってきましたー!今度はうまくできたんですよー!」

「・・・マルチ。頼むからその『ご主人様』という呼び方は、止めてくれないか。おまえがそう言う度に、監視の警官の目が冷たくなって行くんだが・・・」

「ええっ、でもご主人様はご主人様です!それに、私はまだネゴシエートの代金を、体でお支払いしていないんですからー!」

「来栖川製HMX−12・マルチ!!」

 

                  No side

 

「・・・・オモイカネ。これは、何?」

《え?は、はあ、衛星放送で放映されております「ザ・ビッグオー」という・・》

「そう言うこと聞いてるんじゃないの。なんなの、この話は?」

《・・・もしかして、お気に召しませんでしたか?》

「・・・もう、いいわ。他に何か無いの?」

《あ、はい。そういえばホウメイさんがお持ちになったビデオ・ディスクが、まだ未開封ですが?》

「ああ、あれね・・・暇つぶしにって、持ってきてくれたやつ・・・そうね、これでも見てみましょうか。」

《少々お待ちを・・・瑠璃さん、このビデオディスクの中身は未成年者視聴禁止のプロテクトが掛かっておりますが?》

「プロテクト?なんでまた・・・」

《おそらくホウメイさんが、持ってくるビデオを間違えたのではないかと・・・》

「・・・いいわ。オモイカネ、プロテクト解除。映して。」

《え?しかし。これは・・・》

「大丈夫。私は、子供じゃありません。私、少女ですから。それに・・・」

これからの明人さんとの生活に役立つ物が映ってるかも知れませんし・・・(ぽっ)

《・・・分かりました。プロテクト解除。映します。》

 
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