機動戦艦ナデシコif「誰よりも早く貴方に出会っていたら・・・」

第九話:奇跡の作戦「クルスク」

 

なんでしょうね、アレは。大きさはエステバリスの四倍くらいでしょうか?

地球の戦闘機と戦っていた無人兵器とは、コンセプトからして違うみたいです。でも、いかにも鈍重そうなスタイル。

あれじゃあいい標的です。最初は驚いた皆さんも、いまはややあきれ気味です。

「装甲は厚そうですが、機動性は皆無でしょうな。いい的ですな。」

「大きいだけのでくのぼう、か。」

「かんちょー、早いとこ吹きとばしちゃえばー?」

今までの木星の機動兵器は、無人機であるが故の高機動性で地球の兵器を圧倒していたんですが、

それまでの戦法をまるで無視したかのようなこのゲキガンガーもどき・・もとい、巨大人型兵器。

・・・でも、なんであんなスタイルしてるんでしょう?

「うーん・・・瑠璃ちゃん、グラビティ・ブラストのエネルギーチャージできてる?」

「はい、いつでも発射可能です。」

「んじゃ、さくっとやっちゃって。」

「了解。グラビティ・ブラスト発射・・」

『ナデシコ!聞こえるか!気を付けろ!』しゅこーぱー

あ、これはコスモス艦長ですね。何でしょうか?

でも、とりあえず発射シークエンスにはいっちゃってますんで、とりあえず後回し。

発射された重力波は、ゲキガンガーもどきに向かってまっしぐら。案の定機動性は皆無らしく、よける事もできません。ま、これで終了・・・え?

「なに!?」

重力波が命中する瞬間、敵の姿が、かき消すように消えたんです。これは?!

『オモイカネ、敵は?!命中したんじゃあないの?!』

《命中の確認はされておりません。機体反応レーダーより消失。》

当たっていない?じゃあ、本当に、消えたっていうんでしょうか?

《レーダーに反応。ナデシコ右側面に敵四機確認。》

側面?!何時の間に回り込まれたの?!

「艦長、レーダーに反応。敵はナデシコ右側面に現れました。」

「そんな?!どういうこと?!」

『気を付けろ!アレは”ボソンジャンプ”が出来る新型だ!』しゅこーぱー

ボソンジャンプ、ってあの時、火星で明人さんが成功させた、例のアレ?!

「そんな!奴ら、チューリップに頼らずに単独でボソンジャンプ出来る機体を、もう完成させたっていうの?!こんな短期間に?!」

エリナさんが、信じられないといった表情で叫んでます。・・・え?「もう」?

「なんだかわかんねえが、とりあえず外したんだな?!よっしゃ、俺達の出番だぜ!」

待機中のリョーコさんです。エステバリス隊が、次々と発進していきます。

「リョーコちゃん、ちょっと待って!この敵は普通じゃないの!」

「なにいってやがんでえ!とろとろしてたんじゃあ敵にやられちまうだろうが!」

それはそうなんですが、今回はちょっと様子が違います。今まで通りの戦い方では・・

「よっしゃあ、もらったあ!!」

リョーコさんが発射したライフルの弾丸は、敵のフィールドに跳ね返されています。

図体が大きいだけあって、防御力もかなりあるみたいです。エステの火力では、あの防壁は破れそうにありません。

「ちっ!ならば、直接ぶん殴る!」

リョーコさん、加速するとナックル・ガードを装備、直接打撃を加えようと突進します。

命中直前・・・またです。また、消えました。

「なにい!?消えた!?」

《レーダー反応、敵機天野機後方に出現。》

「ヒカルさん、後ろです!」

「ええ?!うっそー!?なになになに?!」

慌てて回避行動をとるヒカルさん。間一髪、今までエステがいた空間を重力波が切り裂きます。

あの機体は、グラビティ・ブラストまで装備している?!

「なんてこった・・」

「火力、装甲、かてて加えて、あの瞬間移動による機動性・・・」

「まずいわね・・」

どうやら、私たちは敵をなめすぎたようですね。あの火力と装甲に加えて、瞬間移動

”ボソンジャンプ”・・・グラビティ・ブラストや相転移砲でも、倒せそうにありません。

どうすれば、いいんでしょうか?

「どうする?!このままじゃあやられちまうぜ!」

「ふぇーん、なんとかならないのー?」

「敵をなめすぎた報い、ってやつ、ね・・・」

「あきらめないで!」

え?明人さん・・じゃあ、ありませんよ、ね?これは・・・

「まだ、手はあります!ウリバタケさん、重武装タイプ1−Bを射出してください!」

これは、イツキさんです。でも、一体何を?

『なんだってえ!?ありゃあ陸戦用フレームがベースになってるんだぞ!?宇宙空間で使うにゃちょいとばかし・・・』

「あの装備でなければ、倒せません!機動性は落ちますが、相手があれなら問題ありません!早く!」

『お、おう!わかった!』

射出された重武装タイプに、イツキ機は素早く換装。そのまま、陸戦タイプに装備されているワイヤード・フィストを敵に向けて発射しました。

今度は何とか命中。致命傷には程遠いですが・・え?そのまま、イツキ機はワイヤーを巻き取り、敵に取り付きました。

「これなら、瞬間移動されても問題ありません!落とします!」

なるほど、敵とつながってしまえば、移動しても問題なし。考えましたね。これなら・・

「いけない!離れなさい!」

突然の大声。誰?振り返ると、イネスさんが顔面を蒼白にしてます。この人がこんな切迫した表情をしてるのは、始めて見ます。

「イツキさん!離れて!危険なのよ!」

今度はエリナさんです。ただならぬ雰囲気です。単純な戦闘による危険、て訳じゃあないみたいです。

イツキ機は手にしたランチャーを乱射しつつ、吸着地雷を手に取り、・・・

次の瞬間

消えました

敵と共に

《敵機体ナデシコ右上三十度の方向に出現。イツキ機も同座標に確認。》

一秒でしょうか。二秒でしょうか。どれくらいの時間だったんでしょうか。

オモイカネからの報告を、なぜか私はすぐに口に出せませんでした。

「・・・敵機ナデシコ右上三十度の位置に確認。イツキ機も同座標にて・・確認・・」

モニターに映し出された敵の巨体と、それに取り付いたイツキ機・・・最後に見たとき

そのままの、吸着地雷を手に取ったままの姿勢で・・・

ゆっくりと

【明人さんの叫び声】

機体が

【リョーコさんの叫び声】

まるで壊れた人形のように

【艦長の悲鳴】

暗い宇宙に漂って

【アカツキさんの呼びかけ】

流れて、いく

【みんなの・・・】

【みんなの・・・】

 

『後退だ、ナデシコ。この空域から離脱する。エステバリス隊は直ちに帰還せよ。』しゅこーぱー

低いうなりと共に、コスモスが動き出しました。同時に私たちの時間も動き出したようです。後退って、イツキさんは、・・・・どうなるの?

「待ってくれ!まだアイツが!イツキが!」

『無駄だ。あきらめろ。』しゅこーぱー

「なんなんだよ、それ!無駄って、どういうことだよ!?」

『・・ボソンジャンプは、生身の人間には耐えられない代物なのだ。だから木星は無人兵器しか送り込めなかった。

彼女は、もう死んでいる。』しゅこーぱー

「生身の人間はって・・じゃあ俺達はどうなんだよ!?俺達は火星でボソンジャンプとかいうやつを成功させた!

けど、生きてるじゃあないか!イツキさんだって・・」

『君は、君らは、特別だ。ナデシコに乗っていたからな。ディストーション・フィールドがなければ、君らもああなっていた。』しゅこーぱー

「だからって、見捨ててておけっかよ!」

リョーコさんが、我慢しきれずに飛び出していきます。

『アカツキ。』しゅこーぱー

「りょーかい。んじゃま・・」

飛び出しかけたリョーコさんの機体を、アカツキさんの機体が羽交い締めにする格好で制します。

「てっ、てめえ、なにしやがる!はなせよっ!」

「そうはいかない。冷たいようだが、あきらめろ。死人を連れ戻しに行ってたら、君まで死人になる。」

「おい、あんた!キャプテン・ローウェルとか言ったよな!あんた、イツキさんを見捨てるのかよ!仲間なんだろ!引き返してくれ!」

必死に叫ぶ明人さんの目の前に、あの例の怪しげな仮面を付けたコスモス艦長、【キャプテン・ローウェル】の顔が、コミュニケに映し出されます。

にらみ合う格好の、明人さんとローウェルさん。

ナデシコの船体に鈍い衝撃が伝わってきます。敵の攻撃が、ナデシコを取り込んでる格好のコスモスを、破壊しているんです。

確かに、このままじゃあ撃沈されてしまいます。逃げ出すのは正しい選択かもしれません。けど・・・

『彼女はもう死んでいる。死人のために危険を冒すことは出来ない。』しゅこーぱー

「そうかもしれない!でも、もしかしたら生きているかもしれないじゃあないか!いや、そんなこと関係ない!

仲間なんだから、助けなきゃならないんだ!」

『仲間、だと?彼女と君が出会ったのはつい先日のことだろう?ほとんど他人同然の彼女のために、なぜそこまでする?』しゅこーぱー

「そ、それは・・・・俺は、あの時アイツを助けられなかった・・アイツは、命を懸けて仲間を助けて、そのまま大気圏に落下して・・燃え尽きて・・

だから、今度は、俺がアイツの代わりに助ける番なんだ!」

山田次郎・・いえ、「ダイゴウジ・ガイ」。あの人と明人さんは、そう長い時間をすごしたわけじゃあありません。けど、その生き様(死に様)は、

明人さんに多大な影響を与えていたようです。でも、戦況はそれを許してくれそうもありません。

『”山田次郎”、だったな。ナデシコ地球離脱の際の・・・だが、今頃その男は後悔しているかもしれんぞ。

”俺は何で自分を犠牲にしてまで”とかな。』しゅこーぱー

仮面で表情は分かりませんが、ひどい事言ってます、この人。明人さんも愕然とした表情でいます。

「な・・・なんだと・・」

『他人のために命を懸ける行為は、やたらと美しく、かっこよく見える物らしいが、それはただの自己満足だ。

友情や仲間などという物は幻想だ。ゲキガンガーの中にしか存在しない。』しゅこーぱー

え?今、なんて?

「?!あんた、今なんて言った?!なんでゲキガンガーのこと知ってるんだ ?!」

『・・・・・そのようなことは今は関係ない。逃げ出すのが先だ。コスモス、全ミサイル放出準備。急げ。』しゅこーぱー

「は?ミサイルを、ですか?」

『そうだ。発射じゃあない、放出だ。信管は近接作動にセット。ナデシコとコスモス周辺にばらまきながら後退。

これで彼らのジャンプ範囲を制限できるはずだ。』しゅこーぱー

「り、了解!」

「あ、あのー、私の出番は?」

艦長、なんだか影が薄くなってますね。こういうとき役立つ人のはずなんですが、

コスモスに取り込まれた状態のナデシコじゃあ、そうもいかないですね。

『ナデシコ戦闘コンピューターのオペレーターはいるか?』しゅこーぱー

・・・あ、私のことか。

「はい。何でしょう?」

『彼らのジャンプは、ある一定のパターンがあるはずだ。今までの戦闘データーを解析、出現位置をある程度でいい、予測しておけ。

コスモスの連射式のグラビティ・ブラストで予測ポイントを射撃する。時間稼ぎにはなる。』しゅこーぱー

「わかりました。オモイカネ、お願い。」

「私の出番・・・」

艦長、しつこい。

 

こうして、月奪還作戦はかろうじて成功しました。尊い犠牲を払って・・・

あのゲキガンガーもどきは、母艦を失っていたことも幸いして、あまり深追いはしてきませんでした。

こちらの被害は、ナデシコをかばう格好になったコスモスに集中。地球までの航行は不可能なため、このまま月のドックで修理するそうです。

もっとも、ドック使用可能まではまだ時間が掛かりそうです。連合軍もあんまりあてに出来ない今現在、

戦力は私たちナデシコのみと言っても過言じゃあありません。

あのゲキガンタイプ(敵の呼称を一般公募したところ、これに決定してしまいました。明人さんはものすごくいやがりましたけど・・・)

がもう一度襲ってきたら・・・

そんなわけで、ナデシコの地球への帰還は一時お預け。戦力が整うまでは付近の哨戒任務に就く事になりました。

 

「こちらアカツキ。これより月面西地区の哨戒に向かう。おあとよろしく。」

『了解です。気を付けて。』

「了解。どうだい、メグミちゃん。後でお茶でも。」

『アカツキさん、後がつかえてます。とっとと出てください。』

「はいはい。んじゃま・・」

コスモスにいたアカツキさん、どういう訳だか知りませんが、しばらくナデシコでパイロットやるそうです。

まあ、コスモスはしばらくは使えそうにありませんし、余剰人員をなくすためなんでしょうが。

「・・こちら明人。南地区の哨戒任務に出る。」

あ、明人さん。・・・・まだ、ショックから抜け出せてないようです。

あの後明人さんは、イツキさんを助けることが出来なかった事を、ものすごく悔やんでました。

あの時、山田さんを助けることが出来なかったときと同じくらい、いえ、それ以上に・・

 

『あ、あの、明人さん、まだ調子よくなさそうですよ。無理に哨戒任務に出なくても、誰かに代わってもらうとか・・・』

「・・・ありがと、メグちゃん。大丈夫だから。何かやってないと、逆に落ち着かなくって、さ・・」

そういって、かすかに笑う明人さん。・・・私、見ていて、なんだか辛い、です・・・

また、私は何も出来ないんでしょうか・・慰めることも、勇気づけることも・・・

 

何も・・・・・

         −−−続く−−−

                          1999/8/14 かがみ ひろゆき

            :次回予告:

 

ホウメイガールズ:            『これからの あらすじー!』

                ついに、月奪還に成功した我らがナデシコ!ああっ、だが、その代償 となったイツキ・カザマの死に、

                明人さんの心は悲しみにくれる! 瑠璃ちゃんは、百合花嬢は、メグミおねーさんは、ついでにサユリは

                (ちょっと、ついでってのはどういう意味よ)明人の心を癒すこと ができるのか!

                          次回機動戦艦ナデシコif第十話「『”彼女”らしく』があぶない!」

                                   うおいっす!

 

ご意見、ご感想及び予告編のアイデアはこちらへ!    langa@tokai.or.jp

ps:前回の予告の答えは「新世紀エヴァンゲリオン」!正解者はhasegawa yoshinobu さん!おめでとう!


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