機動戦艦ナデシコif「誰よりも早く貴方に出会っていたら・・・」

第八話:温めの「カルネアデスの舟板」

ーステップ2ー

 

こんにちは。星野瑠璃です。早速ですが、前回の続きです。

あの後艦長、イネスさん、プロスさん、エリナさんの四人が退出した後、残された私たちは、

一週間後に控えている、「月奪還作戦」について、あの色男さん(アカツキ・ナガレというそうです)から大まかな説明をしてもらってます。

 

「・・と、まあこういうわけで、君たちのおかげで連合宇宙軍の建て直しも何とかなったし、いよいよ反撃開始。

手始めに月をまず取り返そうという訳なんだが・・・ここまでで何か質問あるかな?」

アカツキさんの言葉に、早速手を挙げた人がいます。明人さんです。

「火星は?火星はどうなるんですか?『スキャパレリ・プロジェクト』って、火星を、火星の人たちを助けるのが目的だったんじゃあ無かったのか?」

明人さんの言葉に、アカツキさんやれやれといった感じ両手を広げ、首なんか振ってます。ずいぶん芝居がかったリアクションです。

「やれやれ、これだから素人は・・・いいかい、天河くん、だったっけ?火星を取り返すといったって、つい先日、

君たちはその火星から命辛々逃げ出してきたんでしょーが?もう一度向かったところで、勝てるのかい?」

「そ、それは・・・」

「『勝てるまでは何度でも』、だなんてのは通用しないよ。これは戦争なんだ。スポーツじゃあない。

死んだらそれまででしょーが。まずは確実に足下を固めるのが先決なんじゃあないかな?」

アカツキさんの言葉に明人さんは、うつむき加減で、下唇をかみしめています。明人さんもわかってるんです。

今の私たちの力では、火星を救うことなど出来はしないのだということは。でも、理屈じゃあないんです。

「それに、月のコロニーは火星と違って木星蜥蜴の侵攻を受けたとき、たいした抵抗もしなかったから、

ほとんどの施設が破壊されることなく残っているんだ。取り返せれば戦力の増強がかなり楽になる。無駄な抵抗をしたあげく、コロニー一つ

つぶしちゃった火星の防衛軍のようなへまをしていないからねえ。」

「ちょっと、待てよ!」

アカツキさんの言葉に、明人さんなんだか怒っています。何か、気にさわるようなこと言ったんでしょうか?

「ん?なんだい?天河くん?」

「『無駄な抵抗』ってのは何なんだよ!そりゃあ火星のコロニーを潰しちまったのは、軍の責任だけど、あの連中だって必死で、その・・・」

「おやおや、君は確か火星生まれじゃあなかったのかい?まさかその君が軍の連中の弁護をするとは思ってなかったなあ。」

「べ、別に俺はあの連中を許した訳じゃあない!ただ・・・その・・・あいつらだって一生懸命・・・やったんだから・・・」

・・・きっと、明人さんの頭の中には、あの時私たちを命がけで逃がしてくれた、フクベ提督のことが思い出されていたんだと思います。

最初の過ちを、二回目の間違いで償おうとした人。許した訳じゃあない。けど、・・・

「『一生懸命』で戦争に勝てるなら、苦労しないよ。我々プロにとっては結果が全てさ。

そういう甘い考えは百害合って一利無し。ま、素人の割にうまくやってきたみたいだからねえ、君。ちょっとうぬぼれてるんじゃあない?」

ずいぶんな言い方です。私が思わず抗議の声を上げようとした時・・・

「それくらいにしておいたらどうですか、アカツキさん。大人げないですよ。」

また、あさっての方角から声がかかりました。今度は女性の声です。皆さん振り返ったその先には・・・

アカツキさんと同じくパイロットカラーの制服に身を包んだ、女性が立っていました。

腰まで届こうかという長い、艶やかな黒髪。やや幼さを残した、柔和な顔立ち。この人も・・・パイロット?

「君か・・・大人げないってのは無いんじゃあない?僕はただ、この世間知らずなコック兼パイロットくんに、

世間の厳しさを教えてあげてただけなんだがねえ。」

「プロの軍人なら、それもいいでしょう。でも、彼は本来は民間人。それも亡くなったパイロットの代わりに、

本人の意思を半ば無視した形の緊急召集。今までの功績を賞賛こそすれ、逆に責め立てるなんて。」

こつこつとこちらに近づきながら、その女性はアカツキさんに厳しい視線を投げかけます。

その姿に、ウリバタケさん達男性陣から思わず、ほう、というため息が漏れます。

実際同性の目から見ても、その人はかなりかっこよく見えます。りりしい、と言う表現がぴったりはまってます。

やがてその女性は明人さんの前まで来ると、優しい微笑みを浮かべながら、右手を差し出しました。

「始めまして。私は連合宇宙軍所属、イツキ・カザマ少尉。現在はネルガル重工所属

戦艦【コスモス】の、戦闘アドバイザー兼エステバリス・パイロットとして派遣されている者です。よろしく。」

思わず見とれていた明人さん、慌てて右手を差しだし、握手を交わしました。

戦闘アドバイザー、ということは、フクベ提督と同じ様な立場なんですか。それにしても、この若さでそんな役目に就いているってことは、

相当優秀なんですね、この人。

「あ、は、始めまして。俺は天河明人。ナデシコのコック兼パイロットです。」

「ご苦労様です。そして・・すみません。火星を失ったのも、未だ取り返せないのも、全て我々連合宇宙軍のふがいなさが原因です。

貴方にいかになじられようとも、返す言葉もありません。本当に、すみません。」

少し悲しそうな目をして、イツキさんは明人さんに向かって頭を下げています。

「そ、そんな、君、いや、貴方のせいじゃあないです、から!そ、それに、俺達だって最新鋭のナデシコで火星に乗り込んだのに、

命辛々逃げ出すしかなかったんですから、その、ええと・・・

な、何言いたいのか分からなくなっちゃったけど・・・と、とにかく、カザマさんのせいじゃあないですから!」

明人さん赤くなりながら、必死にイツキさんをなだめています。イツキさん、顔を上げると、またも優しく微笑みます。

・・・ちょっと、いい雰囲気過ぎませんか?

「・・・ありがとう。そう言ってもらえると、気が休まります。私はアドバイザー兼パイロット、あなたはコック兼パイロット。似たもの同士ですね。

どうか、これからよろしく。それと・・・・貴方の作った食事、食べさせて、もらえますか?」

あ・・・・そ、それは、その台詞は・・・

「ええ、喜んで。これから、よろしく!」

あ、明人さん、ちょっと待って・・・そ、そんなにいい雰囲気なんて、ありですか?

思いっきり私の中は台風並の暴風雨状態です。

「あ、えーと、月攻略についての、説明、なんだけど、・・・おーい、聞いてる?」

アカツキさん何か言ってますけど、そんなの後回しです。メグミさんやリョーコさん、

艦長に続いて、また新たな女性が明人さんの目の前に現れました。しかも、今度はかなりまともな女性。

まったく、どうしてこう次から次へと・・・

 

「はっくしゅん」

「あら、艦長どうしたの?風邪?」

「い、いえ・・・別に。」

「そう、ならいいけど。それより・・・ちょっと、右手見せてみなさい。」

「え?あ、あの、何ですか?」

ぐい。

「ふうん・・・やっぱりね。優男とはいえ男の顔を思いっきりひっぱたいたんですもの。こんなに赤くなってるわ。ちょっと待ってなさい。」

そう言うと、イネスは白衣の中からコールドスプレーを取り出し、赤く腫れた百合花の右手に吹き付けた。

「あらあら。ずいぶん痛そう・・・全く驚いちゃったわよ。いきなり張り手ですもの。貴女、なかなかやるわね。気に入ったわよ。」

治療を受ける百合花をのぞき込みながら、エリナは少しいたずらっぽい笑みを浮かべている。

「い、いえ、あの時はつい思わずカッとして殴っちゃって・・・」

「あら、隠さなくていいわよ。貴女があの時殴らなかったら、そこの唐変木はクルーにたこ殴りにされていたわ。

もっとも、本人はそれでもいいと思ってた様だけど・・」

ちらり、とプロスペクターの方を見ると、イネスはそうつぶやいた。

「ま、それはそれとして。それよりイネスさん、艦長の次は私の方をお願いしたいんですが・・・」

赤くなった頬をなでながら、相変わらずの営業用スマイルを浮かべて、プロスはイネスに治療を願うが・・・

「あなたはだめよ。みんなをたばかった罰。そのまま腫れた顔を観衆にさらしてなさい。」すっぱりと切り捨てるイネス。

「そりゃないでしょう、イネスさん。」

「あら、私も同意見よ。まあ、少なくともその赤い頬をしてれば、今回の件でクルーにあまり深く追求されることはないわね。」

「・・・」

「ま、とりあえず艦長、一週間後に控えている『月攻略作戦』、ナデシコにも参加してもらうわよ。いいわね?」

「し、しかし、ナデシコは火星から帰還したばかりで、乗員の疲労も激しく、船体そのものも正規のメンテナンスを受けなければ・・」

「船体のメンテはこの【コスモス】で大まかに行います。残りは作戦終了後地球に降下してから。乗員は、確かに疲労しているけど、

そこの会計監査員に食ってかかろうとした元気があれば大丈夫でしょう?」

「し、しかし!」

「それに、今回の作戦ではそんなに疲れることにはならないと思うわ。一撃で片が付くと思うから。」

「一撃で?それ、どういう意味ですか?」

「相転移砲・・・・」

イネスのつぶやきに、百合花ははっとして振り返った。その表情は固く、透明なクリスタルガラスを連想させた。

「驚いたわね。【コスモス】を完成させてただけじゃあなく、相転移砲まで実用化していたわけ?たった九ヶ月で、よくそこまで行けたわね。」

「残念ながら、相転移砲はつい先日までは使用不可能だったわ。相転移エンジンの出力が足りなくってね。

でも、とりあえず何とかなりそうよ。あなた達のおかげでね。」

「そういうこと・・・」

全てを知っている様なイネスとエリナの会話に、百合花は少し不満げな表情をしている。

それを見るプロスの瞳は、やや悲しげな光を放っていた。

『艦長、あなたがその威力を知った時・・あなたはどう思われるでしょうかねえ。

恐怖でしょうか?歓喜でしょうか?それとも・・・我々は、アインシュタインとトルーマンが犯した過ちを、

今再び再現しようとしているのかもしれませんな・・・』

その時小さな呼び出し音と共に、エリナの前にウィンドウが現れた。

「なにかしら?・・・・そう、わかったわ。お通しして。」

なぜか複雑な表情をして、エリナは百合花に向かうと、【コスモス】艦長がこちらに現れることを告げた。

「艦長さん、ですか?そういえば、エリナさんは艦長代理だって言ってましたね。どんな方なんですか?」

「・・・すぐに、分かるわ。」

歯切れの悪いエリナに、やや不安げな百合花。やがて、入室を告げるアラーム音と共に、【コスモス】艦長が、現れた。

「!?あ、あなたが、か、艦長、さん、ですか?」

「そう・・・彼が、この【コスモス】の艦長、よ。そして、さきほど出撃していたエステバリスのパイロットの一人。」

絶句している百合花、イネス、プロス。そして、彼はゆっくりと・・・・

        ・・・To Be Conntinueed

        
 
 
          ・・・あとがき・・・

どうも、かがみ ひろゆきです。いきなりお詫びから。前回の予告でおもいっきし月攻略戦の戦闘が始まるようなこと書いてましたが、

実は全然進んでません。(笑)TV版ではすぐにお亡くなりになってしまったイツキ・カザマさん、本小説では早々と登場です。

なんだか明人くんといい雰囲気で、こりゃあまずいですねえ。実際TV版でもっと早く出会っていたらこうなっていたかも・・

はっ、まずい!タイトルと結構シンクロしてしまっている!瑠璃ちゃんのヒロインの座危うし!というわけで(意味不明)

次回予告あーんど機動戦艦ナデシコifを、みんなで読もう!

1999/7/28 かがみ ひろゆき

                                

                                  ==次回予告==

リョーコ:(・・・わかったよ、やるよ、やりゃあいいんだろ)

      ・・・お、おっす、おらリョーコだ。いやーまいったまいった、全然話進んで ねえんだもんあ。おまけにイツキとかいうおかしな奴が現れて、

      ナデシコはまたまた大変なことになりそうだし。ま、なんとかなるか。 んじゃ、

      次回機動戦艦ナデシコif、温めの『カルネアデスの舟板』ステップ3 みんな、見てくれよな!

      ・・・・・・っ、だああっ!!責任者でてこいっ!

 

 

と、とりあえず、感想、苦情、要望はこちらまで!それじゃっ!

                                 langa@tokai.or.jp

リョーコ:そこかああっ!

ばきいいっ!ぐえええっ!・・・・・・・・・・・・・(お終い)

 

ps: ・・・ぜ・・・前回の・・・予告は・・ゆ、勇者王、ガオ、ガイ、ガー・・・正、解者、な、し・・・がくっ(今度こそ、本当に、お終い)


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