機動戦艦ナデシコ「if誰よりも早く貴方と出会っていたら・・・」

                  第五話: るりちゃんとあきとくんの「こうかいにっし」・・・ちゅうへん

 

 山田さん、死んじゃいました・・・あっけないほどに・・・

あれから後、明人さんとアオイ少尉の戦いが始まりました。と、いっても、一方的にアオイ

さんが明人さんを追いかけ回してる、って感じです。明人さん、只でさえも争い事が

嫌いなうえに、相手が同じ地球人なもんですから。他のデルフィニウムは山田さんが

押さえ込んでるんですが、このままじゃあらちがあきません。まあ、相手は旧式な化学

反応式の燃料で飛んでいるデルフィニウム。エネルギー波をジェネレーターで変換して、

重力波推進で飛んでいるエステとは、活動時間に差があります。まあ、活動範囲は

ナデシコの側をあんまり離れられないエステの方が狭いんですけど・・・

山田さん、戦わない明人さんにかなりいらだっているようです。そんなこといったって、

仕方がありません。そういう人なんですから。・・・私の知ってる、明人さんは・・・

コックなのに、周りの都合でエステバリスに乗せられて・・木星じゃない、同じ地球の

人間と戦わされて・・・明人さんはただ、火星の人たちを助けに行きたいだけなのに。

明人さん、アオイ少尉とか言う人と、なんとか話し合おうとしています。

でもそんな戦いのさなか、オモイカネの警戒システムから警報です。新手?いえ、そんな

はずはありません。ステーションに駐留しているデルフィニウムは、これで全部のはず。

じゃあ、何?・・・これは・・第二防衛ラインの大型ミサイル!?そんなばかな・・・

まだデルフィニウム部隊が戦闘空域で戦闘中なのに・・味方ごと撃つなんて・・・

とりあえず、艦長に報告です。「艦長、第二次防衛ラインより、大型ミサイル多数接近。

予定よりかなり早い攻撃です。このままではナデシコはもちろん、デルフィニウム部隊も

ただではすみません。」報告を受けたブリッジに、驚きと戸惑いの空気が立ちこめます。

「メグミちゃん、第二次防衛ラインのミサイル衛星に通信!ミサイル発射中止要請と、

発射されたミサイルの自爆を!味方も巻き込んでの攻撃なんて、許せない!」

「は、はい!」慌ててメグミさん、通信を繋ぎます。間に合うといいんですが・・

「?!か、艦長!これを!」なんだかかなり慌ててメグミさん、通信回線をオープン

チャンネルで解放します。敵味方問わず流れた通信内容は・・・

「・・ザ・・こちら・・ミサイル・・星。発射管制装置が・・・蜥蜴に・・乗っ取られた・・・みんな

・・・逃げ・・・」

・・・最悪です。かまわず攻撃してくるわけです。早いとこデルフィニウム部隊の皆さん

逃げ出してくれるといいんですが・・・もっとも、このまんまじゃあ、ナデシコも甚大な被害を

受けてしまいます。ナデシコを守る鎧、「ディストーション・フィールド」。

生半可な攻撃はこのフィールドには通用しませんが、それも出力100%での話。

ナデシコのエンジン「相転移エンジン」は、真空をより低位の真空に解放することで莫大な

エネルギーを得ていますが、大気圏内では、その運転効率は極端に下がってしまいます。

もう少し高度が上がっていればフィールド出力もUPして、ミサイルくらい・・・

あ、明人さんから通信です。もっとも戦闘中は、オモイカネオペレーターの私ではなく、

メグミさんがパイロットとの連絡を受け持ちます。ちょっとだけ、通信士がうらやましかったり

して・・・何考えてるんだろ、私。

状況を理解した明人さん、防ぐ手だてを聞いてきました。こういう事は艦長の出番

なんですが・・・あ、固まってる。迎撃手段、無いみたい。ま、無理ないかも。

なにせナデシコは大気圏突破中。迎撃ミサイルなんて撃てないし、グラビティ・ブラスト

も正面の敵にしか撃てないし。第二次防衛ラインにたどり着く頃はフィールド出力が

上がってるはずだったから、こんな早い段階での迎撃は予想外。あんまり意識して

なかったのが裏目に出たみたい。オモイカネ、何か手段は・・え?

エステによる直接迎撃?!だめ、そんな危ないこと、させられない!

でも明人さん達、かまわず迎撃に向かう気です。また、そんな無茶を・・あの

「ゲキガンガー」とかいうアニメの見過ぎです!死んじゃうかもしれないのに・・って・・え?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・山田さん・・・・あなたって人は・・・・・ばか・・・・

そういう事に明人さんを巻き込まないでください。いえ、こういう場合「引き込まないで

ください。」かな?せっかくシリアスだったのに・・・

これは漫画じゃあないんです。本物の戦闘なんですから。

それに、エステに必殺技なんかありません。本当に状況が伝わってるんでしょうか?

ノリが悪いって、明人さんのこと言ってますが、あなたの場合、悪乗りです。

どうでもいいけど、ミサイル、さらに接近です。山田さん、そういう大きな事言うんなら、

早いとこなんとかしてください。

ほんと、ばかばっか。とかなんとかいってる間に、デルフィニウム部隊の皆さん、

慌てて逃げ出しちゃいました。まあ、賢い選択ね。でも、例のアオイ少尉だけは、

なぜか逃げ出しません。もしかして、まだ明人さんとやり合う気かしら。そうだとしたら、

かなり迷惑な話ね。他の人たちと同じ様に、さっさと逃げ出してくれればいいのに。

あれ?どうやら明人さんとやり合う気は無いみたい。それじゃ、何で居残ってるのかしら?

・・・・今度は上昇を始めた。いったい何を・・そういうこと。

どうやら、ミサイル迎撃してくれるみたい。恋は盲目というか、行き当たりばったりと

いうか。さっきまでナデシコ落とそうとしていたくせに。

まあ、こっちとしては大助かりだけど。さすが宇宙用、あっという間にナデシコ進路上

に躍り出ました。けど、明人さんとの戦闘で手持ちの武器はもう空みたい。

いったいどうやってミサイルを・・もしかして、体当たり?・・・この人も、やっぱり

山田さんにゲキガンガーを見させられた口かしら?でも、そんな死に方、明人さんが

許すはずありません。目の前で人に死なれるのは・・もうこりごりです。

明人さんと山田さんのエステ、アオイ機まであとちょっとですが、エネルギー供給フィールド

範囲ぎりぎりです。エステはコンパクトに作ったためにエネルギーは、外部からの

エネルギー波による供給方式。あんまりナデシコから離れる事が出来ません。

こういう場合、空戦エステ一機がエネルギーフィールドぎりぎりで待機、エネルギー

中継をしつつ、残る一機が救出活動を行うのが良策です。

今回は明人さんが中継役、山田さんが救出活動を行うようです。

後は、どうやってミサイルを落とす気なのか・・・

「ナデシコ、現在相転移エンジン稼働率50%。ミサイルなお接近。あと30秒ほどで

命中します。カウントダウン開始。29.28.27....」

山田さん、デルフィニウムに取り付くと、コクピットだけ切り離し始めました。ちょっとは

考えてるようですね。デルフィニウムをミサイル代わりにするつもりですか。

でも、・・・間に合うんでしょうか?ミサイルとデルフィニウム、あと5秒で接触。

5・・・4・・・3・・・2・・・1・・・命中。

・・・ノイズで、何もモニター出来ません。山田さんは・・・明人さんは・・・大丈夫でしょうか?

「瑠璃ちゃん、デルフィニウムとエステはどうなっちゃったの!?状況は?!」

艦長、かなり心配そうにしています。明人さんは・・・きっと大丈夫・・きっと・・

「ノイズ、クリアー。主モニター、回復します。エステ01・・確認。無事です。」

よかった、明人さんは無事です。山田さんは?・・・

「エステ02・・・大気圏に、落下中?!機体状況・・推進系に重大な損傷あり。エネルギー

残量、あと15%しかありません。自力でのナデシコ帰還は・・・不可能・・・」

重い空気が、ナデシコ艦橋に立ちこめます。ミサイルは何とかなりましたが、パイロット

一名が犠牲になってしまいました。

まかり間違えば明人さんがこうなっていたかと思うと・・・ちょっと震えが来てます。

ナデシコまもなく大気圏離脱。ビック・バリアが目前です。明人機は・・・たった今

帰還しました。アオイ少尉もなんとか無事です。明人さん・・・

またあの人は、自分を責めているはずです。なぜ助けられなかった、って・・・

また・・あの人の目の前で・・・人が死んでしまった・・明人さん・・・

ガイ・・・あいつ、死んじまった・・・あっけにくらいに・・・

あの時、俺は淳との戦いで、手一杯だった。やっぱり地球人どうしで戦ってる場合じゃあない

と思って、何とか説得しようと思ったんだけど、あいつ、全然聞く耳持たないんだもんな。

相当百合花に熱を上げているらしい。なんとかナデシコが大気圏脱出するまで時間稼ぎ

しなきゃあ・・そう思って逃げ回っていたんだ。他のデルフィニウムは、あの時山田が

押さえ込んでいたんだけど、俺が逃げ回ってばっかりいるんで、業を煮やしてたみたいだ。

「こおらあー!天河ー!逃げてばっかりいないで勝負しねえか!男だろうが!」

「んなこと言ったって、俺はコックなんだ!戦いなんか出来るか!それも、同じ地球人

同士で!」そう、相手は・・・同じ地球人なんだぞ。なんで、木星蜥蜴って言う共通の敵が

いるのに、なんで・・・「やめろ!俺は戦いたくないんだ!」

「今更何を!そんなものに乗っているくせに!」好きで乗ってるんじゃあ無いんだけど・・

「なんでそんなにナデシコの邪魔をするんだ!おまえ、百合花の知り合いなんだろう!」

「う、うるさい!おまえに何がわかる!」「わかるさ!おまえ、百合花のことを・・・」

「だ、だまれっ!そんなことは関係ないっ!」・・わかりやすい奴だよな・・

「なんでナデシコを、いや百合花を止めようとするんだ!」

「あ、当たり前だろうがっ!たった一隻で、しかも地球連合軍全てを敵にまわして!

なんとしても止める!それが僕の、百合花への思いやりだっ!」

「勝手なこと言うなっ!元々おまえら軍隊が火星を見捨てたから、助けてくれないから、

俺達が助けに行くんだろうがっ!」そうさ、だから、俺は・・・俺達は・・・

「か、火星はいつか、取り戻す!」「いつかって、いつだよ!」「・・・」

「わかってんだろ!もたもたしてると、みんな死んじまうかもしれないんだ!あいつだって

それが分かってるから、軍全部を敵に回しても火星に行こうとしている!なら、おまえは!

あいつのこと分かってるんなら、何で邪魔する!なぜ助けてやらない!」

「そ、それは・・僕が・・軍人だから・・だから・・・」「なら、軍人なんかやめちまえ!」

「え?」「な?!ガイ!?」そう、あいつが、その時割り込んできたんだ。

「何ぐちゃぐちゃいってやがるんだ!おめえはよ!惚れた女とドンパチやりあってまで軍に

義理立てしてどうすんだよ!『思いやり」だあ?けっ、本当に思ってんなら、軍全部を敵に

回しても守ってやるのが男ってもんだろうがっ!」相変わらずハイテンションなやつ。

ちょっと・・いや、だいぶゲキガンガーがはいってるなあ。でも、ちょっとだけ・・

「それによ、二人とも女巡ってドンパチやり合ってる場合じゃあないようだぜ。」・・え?

「夢中になっていて気が付かなかったのか?どうやらかなり危くなってきたぜ!ミサイル

衛星から大型ミサイルが発射されたとよ!」「何だって!」

アオイ少尉、かなり驚いてた。そりゃあそうかもな。何しろ味方も巻き込んでだからな。

「なんだって・・・どうした!?・・そ、そんな・・・」どこかと連絡を取っているようだ。こちらも

ナデシコと連絡を・・・

「ナデシコ。聞こえるか?天河だ!どうなってるんだ?ミサイルがどうしたって?」

通信士のメグミちゃんから、大まかな説明を受けた俺。木星の奴らが!このままじゃあ

ナデシコが!「どうすればいい!?何か防ぐ手だては!?」

こういう時、あいつの出番のはずなんだが・・だめだ、こりゃ。あの顔は、笑ってごまかすか

泣いて逃げ出すか、どっちにしようか考えてる顔だ。いい手がないんだな。

こういう時正義の味方なら、かなりのご都合主義でなんとかしちまうんだが・・やっぱ

俺達で何とかするしかないな。エステで迎撃・・間に合うか?!

「ガイ、やるしかないみたいだな!」「ああ、そのようだな。」

にやり、とガイが笑った。俺もつられて笑った。そう、やるしかない!

また、瑠璃ちゃんに怒られちゃうかもな。

「そんな危ないことしないでください」って。でも、俺、やるよ。瑠璃ちゃん。ごめんな。

「ようし、いくぜ明人!ダブル・ゲキガンスパークだっ!」

「おおっ!・・て、ちょっと待てー!なんだよそれはっ!」

「なんだ、知らねーのか?ゲキガンガー3とゲキガンガーV、二つの必殺技を

同時に放つ、究極の必殺技だっ!まあ、設定だけだけどな。」

「そう言う問題じゃあなーい!何の関係があるんだよっ!この状況でっ!」

「ちっちっち。ノリがわるいぜ、明人。こういう燃えるシチュエーションだからこそ、

決めゼリフを言わねえとカッコつかねえだろうが!」

「お、おまえなあ・・・」どうして、こういう状況でここまでのりがいいんだ?

とまあ、俺達がばかなことを言ってる間に、デルフィニウム部隊は大慌てで逃げ出して

いた。まあ、このまんまじゃあ巻き添え食らっておだぶつだもんな。でも、アオイ少尉

だけは、なぜか残っている。もしかして・・「おい、こういう状況でも、まだやる気か?」

俺がいうとアオイ少尉、モニターの中で首を横に振ると、こういったんだ。

「いや、僕は百合花を守りたいから、止めようとした。だが、こうなったら・・僕のすべき

ことは・・・」そう言うと、あいつは突然上昇を始めた。まさか?!おい、やめろっ!

「百合花!僕は、君を守る!今の僕に出来ることは、・・・これだけだっ!」

「おい、ガイ!あいつ・・」「ああ、間違いねえ!ったく、しょうがねえな!いくぜ、明人!」

慌てて俺達は、デルフィニウムの後を追いかけだした。さすが宇宙用なだけあって、

あっというまにナデシコの前に出てしまったけど、俺との戦闘で手持ちの武器はもう

無いはず・・・となりゃ、やっぱこれはお約束の特攻ってやつだろうな。

「くーっ、そんなかっこいい死に方させてたまるかってーの!」ガイ、それ、ちょっとちがうぞ。

とにかく、誰であれ、もう目の前で人が死ぬのを見るのは、たくさんだ!

アオイ少尉の所まで、もうちょい・・あ、あれ?警告?エネルギーフィールド圏外離脱?

ま、まずい・・エネルギーが・・これじゃあ届かない・・どうする!?

「明人、おめえはここで待機だ!俺が淳の奴、連れ戻してくる!」

「ガ、ガイ?でも、おまえの機体も、エネルギー切れじゃ?」

「かーっ、だからトーシローは困るんだよ!エステ空戦タイプは、部隊指揮用にエネルギー

中継の機能があるんだよ!だからおまえはこの場でエネルギー中継のため待機!

わかったな!」「お、おう」「さあて、いっちょ行きますかー!」

そのままあいつは、アオイ機に向かっていった。ミサイルはもう目前・・

ガイは、なんとかデルフィニウムに追いついた。そのまま・・・コクピットだけを切り離し

ている?なんで・・・そ、そうか!機体だけミサイルに突っ込ませるのか!・・間に合うか!?

ガイ!急げっ!・・・よしっ、はずれた!こっちに・・・うっ、ミ、ミサイルが・・

当たったっ!ものすごい爆風で、ガイの機体は、きりもみを起こして落下していく・・

「ガイっ!」慌てて、俺は落下していくエステを追いかけようとするが・・

だめだ、間に合わない?!衝撃かなんかでどこかいかれちまったらしいガイのエステが、

地球に向かって落下していく・・

「明人!受け取れ!」「ガ、ガイ?!」ガイのエステが、俺の方に向かって何かを

投げてよこした・・あれは、・・デルフィニウムのコクピット?!せめてこいつだけでもっ!

なんとかコクピットは回収できた!アオイ少尉は、Gで気絶してしまったようだ。

ガイ、ガイは・・・燃えていく・・・大気圏との摩擦で・・・まるで流星のように・・落ちて・・・

だめだ・・もう・・・追いつかない・・・また・・俺は・・・

「・・ザ・・明人、きこえるか?」「ガイ?!」「淳の野郎は、受け取ってくれたか?」

「あ、ああ、確かに、救出したぜ。無事だ!」「そうか、まっ、上出来かな。」

「ガ、ガイ・・」「なあ、明人。火星、助けられると、いいなあ。」「・・ああ。助けるさ、必ず!」

「ふっ、その意気だ!それとな・・・」「な、なんだ?」「すまねえな、ゲキガンガー最終回、

一緒に見れそうに・・ない、ぜ・・・」「ガ・ガイー!!!」

ダイゴウジ・ガイ・・・熱い奴だった・・・大気圏で、真っ赤に燃えて・・・また、俺は・・

救えなかった・・・・

                        

 

 

                                                     後編へつづく・・・

 

                                1999/5/21      かがみ ひろゆき   langa@tokai.or.jp

 


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