『ハーリー君の受難』



                         
                                                            赤銅竜

”ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン。”その日アキトはけたたましく鳴り続ける玄関のドアのチャイムに叩き起こされた。
 
 寝起きの半ば朦朧とした頭で枕もとの時計をみる。

「・・・・・まだ五時半じゃないかぁ〜・・・・・・。」
 
 普段のアキトは寝起きの良いほうなのだが昨夜遅くまで起きていたせいか、なかなか意識がはっきりしない。
 
 ベットに上半身を起こしたまま、暫くボケーっとしてしまう。その間もドアのチャイムは鳴り続いていた。どうあってもアキトを起こしたいらしい。
 
”ぱんぱん”と両頬を自分の手ではたき無理やり意識を覚醒させたアキトは自分のすぐ右隣ですやすや眠っているルリを起こさない様にベッドから降りる。

 そして寝室のドアを開け、なぜかすぐ外の廊下の床に直に敷いた毛布に包まって爆睡しているユリカとラピスを踏まないよう細心の注意を払って足を踏み出す。

 そのままダイニングキッチンを通りぬけ、玄関に向かう。

”ピンポン、ピンポン。ピンポン、ピンポン。」チャイムはまるで高橋名人ばりに連射されていた。

「はいはい、あんまり鳴らさ無いほうがいいですよー。」

 アキトがドアノブに手をかけようとした瞬間、”バチッ!” というスパーク音と共に、

あんぎゃーーーー!!!!!

 というご近所迷惑な雑巾を引き裂くような悲鳴がドアの向こうから聞こえてきた。

『あちゃー、マズい・・・・遅かったか。』アキトが恐る恐るドアを開けるとそこには・・・・・・・黒焦げになったハーリー君が悶絶していた。(笑)

「マキビ・・・・くん?」

「・・・・・・・・・・・・・・」

 ハーリー君は完全に気絶していた。アキトは仕方無くハーリー君を抱きかかえて台所に連れていく。

 椅子を二つ並べて簡易のベットにするとそこにハーリー君を寝かせて水で絞ったタオルを額に乗っけてやる。

 アキトは暫くそのまま様子を見ていたがハーリー君がなかなか気付かないので、彼の鼻と口をタオルで塞いでみる。

 そのまま見ているとハーリー君の顔がだんだん真っ赤になっていくのが判る。その次は紫色だ。遂に
ぶはぁーーーーはあはあはあはあ!?!?

 ばね仕掛けのように跳ね上がり、顔に乗せられた濡れタオルを毟り取る。

「な、何すんですかーー!?」
 
 ハーリー君が泣きそうな声で叫ぶ。アキトは寝癖のついた髪の毛をわしわし掻きながら、

「ははは、いや死んじゃったのかなーと思って。」

 済まなそうに笑う。そしてハーリー君に尋ねる。

「それより今日はどうしたんだい、ハーリー君。こんなに朝早くから。」

 アキトの言葉にハーリー君は慎重に言葉を選びながら答える。

「あの、・・・・そのー・・・・。さ、散歩の途中で近くにまで来たもんで、ついでに・・・・ちょっと寄ってみたんです。」

 そう言うハーリー君は散歩するにはお洒落過ぎる格好で、まるで誰かをデートに誘いにでも来たような服装(先程のトラップですこし焦げているが)をしている。それにいくら近くに来たとしても普通は朝の六時前から人の家に押しかけて来ない。

「何だ、そうだったのか。オレはてっきりルリちゃんをデートにでも誘いに来たのかと思ったよ。」

 ”ハハハ”とアキトは能天気に言ったが急に真顔になって言う。

「もしそうだとしたらオレは喩え君でもぶっ飛ばしていたよ。いくらなんでもこんな朝っぱらから人の家にデートに誘うためだけに押しかけてくるなんて非常識過ぎるし、そんなヤツにルリちゃんは任せられない。」

 アキトのその言葉に図星を刺されたハーリー君は”ツー”と冷や汗をたらす。

「やっ・・・やだなあ、アキトさんってば!!僕がそんな非常識な男に見えますか・・・あははは、はは・・・・。」

 妙に乾いた笑いを浮かべるハーリー君。そんな彼を不思議そうに見ていたアキトは冷蔵庫を開け中をごそごそ探り始めた。

「マキビ君、何か飲むかい?」
 
 アキトの問いに喉に渇きを覚えていたハーリー君は

「あ、じゃあオレンジジュースか何かでも・・・・」

 と、答えた。アキトはオレンジジュースをコップについで渡し、自分はパックの牛乳を飲む。そんなアキトのしぐさを見ながらハーリー君はオレンジジュースにくちをつける。

『テンカワ・アキト。元ナデシコのエースパイロットにして特A級ジャンパー。現在は屋台のラーメン屋兼ネルガルのテストパイロット・・・・か。う〜ん・・・・・・・艦長はどうしてこんな漢が良いんだろうか・・・・?。顔はは、まあ・・・・男前であることは認めてもいいけど十年後なら僕の勝ちだな、なんてったって僕のほうが十歳以上若いんだし。性格?・・・・・この人は優柔不断なんだよな。女性関係も派手みたいだし、現に今も三人の女性と同棲しちゃってるし・・・まったく・・・アラブの王様じゃ無いんだから。しかもその内の二人は未成年だし・・・・・・。絶対ロリコンに違いない。』

 ハーリー君はジーっと食い入る様にアキトの身体を見つめる。アキトの身体は細身だが鋼の様に鍛えられ無駄な脂肪はまったく無い。至る所につけられた無数の傷跡が凄味すら感じさせ、ハードボイルドなオーラを発している様だ。

『身長だって十年後には絶対僕のほうが高くなってるさ。・・・・大体なんだよアノ筋肉は。腹筋なんて仮面ライダー顔負けに割れまくってるし、繊細さがかけらもないんだよな。もしかして艦長ってばマッチョ好き?趣味悪いよなぁ。』

 アキトはハーリー君の視線に気付き彼のほうを向く。

「マキビくん、どうかした?俺の顔に何かついてる?」

「いっ、いえ・・・・・それにしてもドアの呼び鈴に電流を流すなんて酷いじゃないですか!危うく死ぬ所でしたよ!!

 慌てて視線を外したハーリー君は、強引に話題を変た。

 それを聞くとアキトは済まなそうにこたえた。

「ごめん・・・・あのトラップ、ルリちゃんがウリバタケさんお願いして取りつけてもらったものなんだよ。」

え゛?

「押し売り撃退用にって・・・・・、最初は十回以上鳴らしたら無差別に発動する様になってたんだけど、いつだったかユリカの親父さんが引っかかってえらいことになったもんでね。改良された筈なんだけど・・・・おかしいな。」

「改良ってどんな風になんですか。」

「うん、隠しカメラによる画像認識と指紋判別のシステムで訪問者を識別するように改造したんだけどね。何しろ人物判別のデーターに多分にルリちゃんの好き嫌いが入っているもんで・・・・こないだなんかエリナさんが引っかかっててたよ。・・・・ルリちゃんハーリー君のこと忘れてたのかな?」

 まさかルリがわざとハーリー君のデータを敵性人物の方に入れているとはしらないアキトだった。(私とアキトさんの間を邪魔するものは全て敵です。<ルリ)・・・・・もちろんこの家のもう片方の住人であるユリカとラピスも敵性人物に入っている。(笑)

「ははははは・・・・・」
 
 ハーリー君もまさかルリが自分を敵性人物の方に入れているとは思いたくないようでただ力なく笑うしかななかった。恐ろしくてとてもルリには尋ねる勇気はないだろう。

『艦長〜ぅ(半泣)』

 やがてアキトは朝食の準備を始めた。慣れた手付きでフライパンにサラダ油を引きながらハーリー君に尋ねる。

「朝飯まだだろ?よかったら食べていくかい。」

「いいんですか、ご馳走になっちゃって。」

 現金にもハーリー君はうれしそうに言う。

「一人分ぐらい増えたってどうってことないし、食事は大勢で食べた方が美味しいからね。」

 そういいながらアキトは十分に温まったフライパンにベーコンを乗せる。

”ジューッ”肉の焼ける良いにおいに誘われるようにユリカとラピスが起きてきた。

「「アキト、お〜は〜よ〜」」

 黄色のタンクトップにブルーのカットジーンズを履いたユリカとピンクの可愛らしいクマのアップリケ入りのパジャマを着たラピスはそう力なくアキトに挨拶するとテーブルにつく。

 二人とも目が赤く寝不足気味の様子だ。

「おはよう御座います、ユリカさん、ラピス。」

「あれ、ハーリー君どうしてここにいるの?」「ねぇアキト、なんでハーリーがここにいるの」

 口々に言う二人にアキトが答える。

「近くに来たもんだから寄ってくれたんだよ。」

「「ふーん。」」

「それよりお二人とも随分と眠たそうですね。昨夜なんかあったんですか?」

「監視活動。」

ユリカが欠伸をかみ殺しながら吐き捨てるように言う。

「?」

「アナタには関係ないわ。これはわたしたち三人の問題なの。」

 なぜか不機嫌そうに答えるラピス。

「??」

 なぜこの二人がこんなに不機嫌なのかまるで訳が分からないハーリー君だったが、気を取り直して恐る恐る尋ねる。

「あの〜、ところで艦長は・・・・?」

 ルリの名前を出した瞬間、”ギッ”と二人が物凄い目つきでハーリー君を睨みつけた。もし視線で人が殺せたらハーリー君は確実に死んでいただろう。ユリカとラピスはそれほどの凄まじい目つきをしていた。

「「「・・・・・・・・・・・・」」」

 重苦しい雰囲気が三人の間に漂う。そんなことも露知らずアキトはできた食事をテーブルに並べている。

「ハーリー君、ベーコンエッグは半熟で良かったかな?」

そういって食事を並べるアキトをジーっと無言で見つめるユリカとラピス。ややあってユリカが重い口を開く。

「アキト・・・・・・首筋にキスマークが付いてるね。昨夜までなかったのに・・・・・。」

 ”ギクッ”と一瞬動きを止めるアキト。慌てて首筋を右手で隠すがもう遅い。

「アキト・・・・・・肩口に歯形が付いてる。誰が付けたの・・・・・・・・・・?。」

 ラピスが半分泣きそうな声で言う。

”ギクギクッ”アキトは左手で右の肩を押さえる。そこには小さなしかしハッキリとした歯形が付いている。

つられて見たハーリーはアキトの体のそこかしこにキスマークと歯形が付いているのを発見した。

『え?コレってばユリカさんが付けたんじゃあ・・・・・??』

「「あ〜き〜と〜」」

 地の底から響くような二人の声に”ズズ”と後ずさるアキト。

「あ、いやその。ハハハハ(汗)」

 アキトが何か言い訳を口にしようとしたその時、ようやっとルリが起きてきた。

「おはようございます、アキトさん。」

 ルリはしっとりとした微笑を浮かべて。少し照れくさそうに挨拶した。なぜかラブシーン直後の洋画ヒロインの、はにかんだ雰囲気に似ていた。©賀東招二

「あ、艦長。おはようござ・・・・い?」

 ハーリー君はルリに挨拶しようと振り向きそのまま硬直してしまった。

 ルリは雪のように白い素肌の上に大きなスカイブルーの男物のシャツ一枚羽織っただけの姿で立っていた。シャツはいくら大きいとはいえ、ぎりぎりショーツがが隠れるぐらいの丈しかない。ほぼ丸出し状態の太股が妙に眩しい。ただまったく凹凸のない胸の辺りがかなり淋しかったのだが・・・・・・・。

「る・・・ルリちゃん、その服・・・・まさか・・・・。」

 震える指先で自分を指差すユリカに向かい勝ち誇った表情でルリは答える。

「ええ、これアキトさんのなんです。いただいちゃいました(照)。似合います?」

 その場でくるっと一回転するルリ。その拍子に”ピラッ”と裾が捲れ可愛らしいショーツが一瞬見えた。ピンク色だった。

 ”ブー”といきなり鼻血を噴出すハーリー君。お子様には少々刺激が強すぎたようだ(笑)。

「ずるい、ルリ。アナタが何でアキトの服着てんのよ。!!」

 ”バンバン”とテーブルを平手で叩きながら怒るラピス。そんなラピスにルリは余裕の表情で答える。

「忘れたんですか、ラピス?今日一日は私にアキトさんを自由にする権利があります。従ってアキトさんの物をどうしようが私の勝手です。」

 そう言った後、ちょっと顔を赤らめ、もじもじしながら言う

「それに・・・・何時でもアキトさんに抱かれてる感じがして・・・・とっても着心地が良いんですよ♪」

かかかか、艦長ー!!コレはいったいどう言うことなんですかー!!!

 はじめて目にするセクシーショットなルリの姿に一時硬直状態だったハーリー君が我に返って大声を上げた。

 そんなハーリー君を見て眼をぱちくりとさせたルリが一言。

「あれ、ハーリー君。いたんですか?全く気づきませんでした。」

「え、今まで気づいていなかったんですか?」

「はい。(きっぱり)」

 半泣きになって尋ねるハーリー君に容赦なく答えるルリ。完全にOut Of 眼中だったようだ。

う、う、う、・・・・うわーーーん!!!(泣)

 泣きながら脱兎のごとく駆け出したハーリー君はなぜかトイレに駆け込み中から鍵をかけて閉じこもってしまった。

 「お、おい、マキビ君!!」

 アキトは慌てて追いかける。そしてトイレに閉じ篭ってしまったハーリー君を宥めすかして説得を試みる。

 ルリはそれを平然と見送ると首を傾げポツリと呟く。

「何故、ハーリー君は泣いているんでしょう?はた迷惑な子ですね。」

 その言葉を聞きユリカとラピスはこそこそと言う。

「ルリちゃんってば結構残酷だよね、男の子の純情踏みにじっちゃって。」「ハーリー・・・ちょっと可哀想。」

 程なく五分ほどであっさりとアキトに説得されたハーリー君は何とかショックから立ち直れたようだ。

『負けない、僕はこんなことじゃあへこたれないぞ!』

 なかなか打たれ強いハーリー君だった。

 ようやくアキト達五人は食事をはじめた。並び順はアキトとルリが並んですわり対面にユリカとラピス。そしてハーリー君は・・・・・・・・・・床に正座させられていたりする。(笑)

『ヒ、ヒトイ・・・・・・あんまりだ・・・・。』

またもや半泣きになるハーリー君。そんな彼にルリはいたって明るい声で謝る。

「ごめんなさい、ハーリー君。椅子が四つしかないもんですから。」

「あははは、はは・・・・そんな、気になさらないでください艦長。突然お邪魔したのは僕のほうなんですから。はははは・・・・・はは・・・・はぁ。」

 やけくそ気味に明るく笑うハーリー君。<そうだぞハーリーくん。昔、某国営放送でやっていた連続テレビ小説の主人公の少女のように土間で食べさせられない分まだましだぞ。

 そんなこんなで食事は続いていた。しかし、アキトは何時にもまして非常に居心地が悪かった。隣に座っているルリが彼の肩にしなだれかかるように密着しあれやこれや世話を焼いている。そうまるで新婚ホヤホヤのカップルみたいに、・・・・・・・

 それを対面からじーーーっと見つめるユリカとラピス。その視線には憎悪と絶望と妬み嫉みが瘴気となって吹きつけて来るような錯覚さえ覚えさせる。

 そして背後からはハーリー君の羨望と嫉妬の眼差し。背中に穴があくほどの痛い視線。

「はい、アキトさん。アーんしてぇ。」「い、いいよルリちゃん。自分で食べれるから。」

 ラブラブファイヤーな二人を見てユリカは眉をぴきぴきさせながら口を開く。

「ルリちゃん・・・・、さっきも聞いたけど、どうしてアキトのYシャツ着てるの?」

「そうよそうよ、それにアキトの体中についてるキスマークと歯形、あれあなたがつけたんでしょう!」

 ラピスも手に持ったスプーンを振り回しながら言う。

 ルリは頬を赤く染めながら小さく呟く。

「だって・・・・・・アキトさんったら・・・・・・昨夜・・・ベッドの・・・ごにょごにょ。(赤)」

””どんっ!””

 
「いでー!?」突然テーブルの下で大きな音がしてアキトが大声で悲鳴を上げた。

 見ればユリカとラピスが足の踵でおもいっきりアキトの両足の甲を踏みつけていた。

「あ〜き〜と〜ぉ!!!私という妻がありながら〜!!!」「ひどいよアキト、私にはそんなことしてくれなかったのに!!!」

 二人ともぐりぐりと足にだんだん力を込めていく。

 アキトは脂汗を流しながら必死に言い訳する。

「ち、違うんだ、誤解だ!!ユリカ、ラピス。俺はなにも疚しいことは・・・・・・ルリちゃんも何とか言ってよぉ(汗)。」

 ルリはアキトのその言葉に両手の指をもじもじさせながら、

「そんな・・・・・・・アキトさんと私、二人だけの秘め事を赤の他人に話すなんて・・・・・・そんな恥ずかしい事・・・・・出来ません(ポ)」

恥らうように顔を背ける。

キーーーー!!!

 怒りのあまりアキトの顔を爪でバリバリと引っかくユリカ。アキトは彼女の腕をなんとか押さえようと苦労している。

「いて!、ゆ、ユリカ、頼む。落ち着けって!!」

 ラピスはバタバタと流しに駆け寄るとおいてあった包丁を握って戻ってくる。

「ルリーー!殺すゥーーー!!」

 ルリに切りかかろうとするラピスをハーリー君が後ろから必死にはがいじめる。

「ラピス、殿中でござる!殿中でござる!!」

そのラピスの目の前でよせばいいのにルリはアッカンベーをする。

むきーーーー!!!

 怒ったラピスは手足をめちゃめちゃに振り回したため、バランスを崩したハーリー君ともども床に倒れこんでしまった。

「わあ!!」「きゃ!?」

 ”どたーーん”と派手な音を立ててコケル二人。

「あいたたた・・・・・・・」

 うつ伏せに倒れこみ鼻をしたたかにぶつけ、一瞬目の前が暗くなったハーリー君は床に両手を着いて何とか体を起こそうとする。

 その時彼の右腕に”ぐにっ”と床にしてはちょっと変な感触が伝わって来た。

『ん?ずいぶん床にしては柔らかいな・・・・・・それに生暖かいし・・・・・』何度か”ぐにぐに”するハーリー君。

 よくよく見ればハーリー君の右手が握っていたものは仰向けに倒れたラピスの左胸だった。

 ラピスは顔を真っ赤にして目に涙を浮かべながら物凄い形で彼を睨んでいる。

「ハーリー君、大胆ですね。」

 ルリはいたって冷静に言う。

”さー”とハーリー君の顔から血の気が音を立てて引いていく。うろたえたハーリー君は思わずのけぞりながら言ってしまった。

「ご・・・・・ごめんラピス!僕はてっきり床だとばかり・・・・・・・平らだったから・・・・・・・」

ぴきっ”ラピスのこめかみに青筋が浮き出る。

「ハーリー君・・・・・・・いくらラピスの胸が平らだからって、床と間違えるなんて・・・・・・、いくら平板でこれっぽっちの隆起も無く抱いたらあばら骨が突き刺さりそうで下を隠したら男か女か性別が分から無いような胸をしているからとはいえ床と間違えたなんて・・・・・・いくら本当のこととはいえラピスに失礼だと思いますよ。」

自分のことは棚に上げてここぞとばかりに言いたい放題なルリ。

「誰もそこまでで言ってませんって(汗)・・・・・・・。」

”・・・・・・・ブチン!!

 ラピスは無言のまま床に落ちていた包丁を拾い上げると”ギッ”と据わった目でハーリー君を睨みじりじりと近寄って行く。

「あははは・・・・・ど、どうしたのラピス・・・・そんな怖い顔して・・・・・もしかして・・・・怒ってる・・・・・・?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 無言のまま更に近づいてくるラピス。

 ハーリー君はずりずりと後ずさりしながら両手を胸の前でプルプルと振る。

「む・・・・胸に触っちゃったことは謝るよ、・・・本当に悪かった!反省している!!」

「・・ぐすぐす・・・アキトにもまだ触ってもらって無かったのに・・・・・しかも平らだって・・・・ぐすぐす・・・・・ぶっ殺す!!!

 ラピスは泣きながら包丁をブンブン振りまわしハーリー君を部屋中追い掛け回す。

「ひえ〜!!!」

 ハーリー君も半べそかきながら必死の形相でラピスから逃げ回る。

ドタドタドタドタ

 ハーリー君はラピスに追いかけられ一張羅の服を切り刻まれボロボロにされながら逃げ回り、アキトはユリカに卍固めされて悶絶している。

ぐうえーーーーユリカ!ユリカ!ギブ、ギブぅーー!!!

”みしみしみしみし”アキトの関節が嫌な音を立てている。

「んっふっふっふっふ。ア〜キ〜ト〜。昨夜ルリちゃんとナニしてたのかな〜。」

 ユリカは顔こそ笑っているものの眼は本気で怒っている。ぎりぎりとアキトを締め上げていく。

「ゆ、ユリカ!・・・・・まじで折れる折れる折れる折れるぅ・・・・・・。」(めきょ!!)「ぎにゃーーー!!!!

「んっふっふっふっ。ア〜キ〜ト〜♪。

 ルリはそんな自分の言葉が引き起こした地獄絵図のようなありさまを、一人テーブルでお茶を啜りながらながめてポツリと一言。





                                     


「バカばっか。」










THE END

オチてねぇー(泣)>作者。


赤銅竜様のお部屋に戻る
投稿小説のお部屋に戻る
トップへ戻る